2006年04月12日13時21分掲載  無料記事
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旅券携帯のカナダ行きに不満の声 観光客減少を懸念する声も

 伝統的に米国とカナダの関係は緊密で、国境を挟んだ両国民の移動は比較的簡単だった。しかし、2001年の9・11米同時テロ事件以降、様相は一変し、セキュリティーチェックが一段と厳しくなった。これに追い討ちをかけるようにブッシュ政権は2008年までに、カナダ国籍者にも陸路米国に入国にする場合にはパスポートなどの提示を義務付ける方針を打ち出した。これは米国人も同じで、カナダに入国するのにはパスポートなどの携帯が必要になる。厳しくなる国境警備の中で、経済、文化的に依存している両国民から動揺の声があがっている。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 両国民は長年、国境通過の際、身分を証明するものとして自動車免許証などを使っていた。つまり国境で係官に提示するだけでOKだった。米国の世論調査機関ゾグビー社の最新データでは、両国民の半数以上が、国境を通過する際、係官から質問を受けたことはないと回答しているほどだ。 
 
 この事態が一変したのは、米国の9・11テロ事件からだ。テロ事件以降、米国は「安全保障」が第一に変わり、チェックが一段と厳しくなった。 
 
 米国は特に「北」のカナダ、「南」のメキシコ国境から、テロリストが陸路入り込むことを極度に警戒している。この結果、国境通過を待つ車の長い行列は日常的になった。 
 
 これは当然観光客の足にも影響し、特に米国人観光客に依存するカナダ経済にも打撃を与えている。米国人旅行客が、カナダで使う金額は16億ドル(約1860億円)といわれるだけに、ホテル業界では米国人観光客の減少は死活問題だ。 
 
 2008年までにブッシュ政権が陸路入国者に対して実施するパスポートなどの携帯義務化は、空や海から入国は2007年からスタートする。 
 
 この義務化では、カナダ人のみならず、米国人もカナダ旅行にはパスポートなどが必要になる。パスポートにほかにも、類似した性格を持つIDカードの発行が両国で計画されている。 
 
■多いパスポート不所持者 
 
 パスポート義務化をめぐっては、米国よりカナダ経済へのしわ寄せが懸念されている。問題はパスポート取得費費用で、発行には100ドルかかるといわれる。米国人がパスポートを保有している割合は現在25%にしか過ぎない。米国人がカナダに行くために積極的にパスポートを取得しない限り、カナダへの旅行客が一時的にせよ減少する可能性がある。 
 
 米ニューヨーク州に近いカナダのオンタリオ州トロントでは、過去5年間にわたり、米国人旅行客が減少している。トロントのホテル利用者の半数は米国人だ。 
 カナダへ自動車免許証の提示だけで簡単に行けたものがパスポート携帯になれば、週末に思いつきでカナダに小旅行しようということも難しくなるとの声もあがっている。 
 
 各種報道を総合すると、トロントの料理店は、米国国境から夏には多数の客が訪れているが、パスポート義務化になれば、かなりの影響が出るとみている。特に家族連れの場合は、子どもが多ければ多いほどパスポート取得費がかさむだけに、カナダ行きにブレーキがかかると心配している。 
 
 一方、ニューヨーク州のバス会社経営者は、カナダ側のナイアガラの滝見物に米国人旅行客をバスで運んでいるが、70人いる運転手の大半がパスポートを保有していない。運転手全員にパスポートを持たせようと思えば、1件100ドルなのでかなりの出費になると、不満を述べている。 


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