2006年04月13日01時10分掲載  無料記事
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小児性愛の実話本がメキシコで人気 筆者は名誉毀損に問われる

 メキシコ南東部の保養地カンクンで起きた小児性愛事件を取り上げたノンフィクション作品が今、メキシコで人気を集めている。筆者の女性ジャーナリストは、この作品が原因で名誉毀損の疑いで逮捕され、現在は保釈中の身だ。作品は、カンクンの別荘を舞台に、地元の貧しい少女たちを集め、ヌードの写真やわいせつ行為のビデオを撮っていた高齢の男性らの行動について、被害に遭った少女たちとのインタビューを基に事件を再構成している。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 筆者は、ソルボンヌ(パリ大学)で学び、4カ語が堪能なジャーナリスト、リディア・カチョさん(42)。地元では、虐待された女性ための避難施設も運営している。 
 
 本の題名は「エデンの悪魔」(仮訳)で、昨年出版された。メキシコでは、映画にもなった小説「ハリー・ポッター」に次いで人気を博している。過去3カ月で4万部を売ったという。スペイン語の原作は、英語に翻訳され、ことし後半に米国でも出版される。 
 
 コプリー・ニュースによると、レバノン出身の実業家ジャン・スカール・クリ(61)は、地元の貧しく教育に恵まれない子どもたちを、富裕層が住むコンドミニアム形式の別荘に招き、レイプやわいせつ行為を働いた疑いが持たれている。近くの住民の話によると、多くの子どもたちが、しばしばスカール宅を訪れ、プールで遊んでいたという。 
 
 2003年10月、スカールは当時19歳の少女エマに対し、自らの性衝動を告白している。スカールは知らなかったが、その時エマはメキシコ捜査当局に協力し、隠しマイクをつけていた。スカールの告白の模様は、捜査当局が近くでビデオに収録していた。 
 
■「愛撫はするが虐待はしていない」 
 
 スカールは少女たちに魅かれる理由について「私は、少女に触れ、愛撫することのとりこになっている。それは私の悪癖だ。犯罪であり、禁じられたことであることは知っている。しかし、性的虐待はしていない」 
 
 捜査記録によると、エマがスカールに会ったのは13歳の時だった。カチョさんの作品には、エマのほか、5歳の時にスカールに会った少女も登場する。 
 
 この告白ビデオ収録の後、スカールに逮捕状が出たが、スカールは米ロサンゼルスに逃亡。2004年2月米アリゾナ州で拘束された。以後、米国の収容施設で2年間にわたり、メキシコへの強制送還を回避するための法的手段を講じている。 
 
 スカールの米国の弁護士は、何度かカンクンを訪問しているが、容疑事実については「作り物で、誇張されている」と反論している。また理由は不明だが、被害を捜査当局に報告した7人のうち、エマを含む6人が被害の訴えをその後取り下げている。 
 
 一方、カチョさんは本が出版された05年の12月、名誉毀損で逮捕され、カンクンから1600キロ離れたプエブラ州まで連行された。途中、警官からレイプや殺害の脅しを受けた。 
 
 間もなく保釈になったが、メキシコでは、記者自身が、裁判で名誉を毀損する意図がなかったことを証明する必要がある。名誉毀損罪は記者に不利に作られており、将来有罪になれば、投獄される可能性もある。 
 
 カチョさんは本の中で、スカールの知人であるレバノン出身の実業家(69)もまた、小児性愛に耽っていると告発していた。プエブラ州で手広くジーンズ製造を行っている、この実業家がカチョさんへの報復のためにプエブラ州知事を使って、名誉毀損の疑いで逮捕させた疑惑も浮上している。 


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