2006年04月16日08時25分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

中国の大学生たちとの対話を楽しむ(2) 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

●中国人の青年が筆者に質問すること。 
 
 中国人の大学生や若者に講演した後、よく出される質問は、以下のようなものである。 
(1)日本の体制、文化、社会、政治 
──日本のアニメ、ドラマ、映画、忍者(筆者注:やはり日本のアニメは影響力大。「火影忍者NARUTO」も知られている) 
──『菊と刀』は日本理解に参考になるか?(筆者注:『菊と刀』中国語版は北京では一種のベストセラーになっている) 
──日本人と中国人の死生観の違い(筆者注:靖国神社に関連しての問題意識と見受けられる) 
──日本の老人の置かれた状況、家族との関係(筆者注:筆者が中国も急速に老齢化していることを説明したことへの反応) 
 
(2)日中間の問題、話題など 
──日本の青年は中国をどう見ているか? 
──日本の大学生が真面目に勉強しないというのは本当か? 
──中国の発展を日本は「脅威」と見なしているのか? 
──靖国神社、「南京大虐殺」 
 
(3)中国文化をどう評価するか?中国文学(『紅楼夢』『三国志』)を読んでの感想は? 
(4)日本に留学したいがどうすればできるか?査証政策は?(筆者注:日本語専攻大学生から頻繁に尋ねられる質問) 
(5)日本大使館で働きたいが募集しているか?(筆者注:この質問は非常に珍しい。日本ファンと見受けらた日本語専攻女子学生の質問) 
 
●逆質問もしてみる。 
 
 筆者も中国人の若者に質問をしてみる。 
(1)日本人の「島国根性」・・・中国人の「何根性」(?) 
 中国人学生から「日本の『島国根性』について説明してほしい」と質問されたので、「それは日本人が自己反省して自分に付けた表現である。では中国人は自己反省する場合、どういう表現をするか?」と質問してみた。その中国人の学生は困ってしまって、答えはなかった。後で大学の先生と雑談した時には、「『劣根性』という表現がある。それは他の精神文明から学ぼうとしない大中華思想的なものを批判した表現である」と教えてくれた。 
 
(2)中国人大学生の倫理と精神(?) 
 筆者が、近代日本の発展を説明する文脈で、マックス・ウェーバーの「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」に言及した際、この書について聞いたことがあるかと尋ねてみたが、読んだことがあると答えてくれた学生(日本語専攻学生のみならず法学、経済学専攻の学生も)は、今までのところ皆無である。この書は日本の人文社会科学系の大学生の必読書であろうが、中国ではM.ウェーバーも含めて総じてキリスト教文明圏の思想史についてどう学ばれているのか気になる。M.ウェーバーの「学問の価値自由」への中国の受け止めも関心がある。中国青年がどのような倫理、精神で、市場経済を発展させ、国際社会に入って行くのかは、全世界的に注目される点と言えよう。 
 
●中国人学生との交流・対話で気づいたこと。 
 
 中国の大学生を見ていて、彼らの真面目さにはいつも感心しており、以下の点は好感が持てる。 
(1)中国人の大学生は礼儀正しい。教授や筆者がカバンや資料などを運ぼうとすると、必ず「お持ちしましょう」と手伝ってくれる。これは儒教的な良い面が残っているとも言える。 
(2)日本語専攻学生の日本語能力は高い。筆者が日本語で話すと、2年生以上は、大体理解してくれる。それだけ猛勉強している。 
(3)中国人学生で、居眠りをしたり、おしゃべりをしている学生は本当にいない。(居眠りをしないのは、大学生は殆ど全員キャンパス内の寮に住んでおり、またアルバイトもしないから、疲労も少ないせいかもしれないが。)中国人学生から活発に質問が出される。 
 
 筆者は、2001年に東京都内の某大学で、国際問題についての講演をしたことがある。その時は、パワーポイントを利用して飽きない内容にしたつもりだったが、200人位の大学生の内、3分の1は居眠り、3分の1はおしゃべりをしていた。質疑応答の時間には質問は1問だけ出た。あとで判明したところ、その唯一の質問をしてくれた学生は中国からの留学生だった(!)。(つづく) 
 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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