2006年04月17日23時40分掲載  無料記事
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移民法抗議デモ参加の米中学生が自殺 学校当局の処分通告を苦に?

  米カリフォルニア州オンタリオで先月末、厳しい移民法改正案に抗議する学生デモに参加した中学生が、学校から処分を通告された直後自殺した。処分を苦にした自殺の可能性が大きいが、関係者の間からは、第一号の「殉教者だ」との声も上がっている。学校当局は中学生の死について哀悼の意を表明したが、今後裁判上の問題に発展する恐れもあるためか、責任問題については言及を避けている。(ベリタ通信=エレナ吉村) 
 
 各種メディアの報道では、自殺したのは、デアンサ中学2年のアンソニー・ソルテロ君(14)。3月28日、下院が昨年12月に採択した厳しい移民規制法案に抗議する学生デモに参加した。 
 
 ソルテロ君は30日に、中学の副校長から(1)卒業行事へ参加を認めない(2)非行矯正施設に入ることになる(3)両親には罰金が科される──などと通告された。 
 
 この後ソルテロ君は勤務中の母親に電話し、処分を通告された旨を伝えた。その後、彼は銃で頭を撃ち自殺した。勤務から戻った母親が変わり果てた息子を発見した。銃をどこから持ち出したかは不明。 
 
 自殺する前にソルテロ君と話した高校1年のアナベル・ロサさん(15)によると、あわてた様子はなかったが、かなり気落ちしていたという。 
 
 遺族の弁護士のソニア・メルカド氏は、平和的なデモに参加する学生を罰するような学校であってはならないと話している。 
 
■不法移民は重犯罪者に 
 
 今月10日、教会でソルテロ君の葬儀が営まれた。数人の友人たちがソルテロ君の顔が描かれたTシャツを着て列席した。母親の話では、ソルテロ君は学校の成績も良く、スポーツや料理が好きだった。自殺当日も出勤前にコーヒーを作ってくれたという。 
 
 遺族は学校区当局に対し、なぜ自殺に追い込まれたのかについて照会していたが、学校区側は同日声明を発表した。声明は「家族と友人に深い同情の意を表する。しかし家族のプライバシーや、学校区に対する訴訟の恐れから、今回の不幸な出来事に関し、これ以上のコメントはできない」と舌足らずの内容になっている。 
 
 米下院は昨年12月に不法移民を「重犯罪者」として扱う法案を採択した。しかし、これに反発するヒスパニック(中南米系の人々)や学生たちが最近、首都ワシントン、ロサンゼルス、ニューヨークなどの都市で抗議デモを活発化させている。 
 
 学生たちは中学や高校生が主体だが、移民法改正案の中身を熟知している者は少なく、かなりムード的に参加している若者が多いともいわれている。 
 
 一方、米国メディアも連日移民問題を取り上げている。米国には1100万から1200万人の不法移民が滞在しているといわれ、そのうち約700万人が違法就労している。下院案は、メキシコ国境から入り込む不法移民の取り締まるため、高いフェンスを設置するとともに、不法移民を殺人、強盗、レイプなどの犯罪者と同格の「重犯罪者」として扱う─など、厳しい内容になっている。 
 
 上院はこれとは別に不法移民を「合法移民」に切り替える法案の提出を検討していたが、7日に法案採択に失敗し、休暇明けの4月21日以降に審議は持ち越しになった。 


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