2006年04月21日13時46分掲載
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5・1ボイコット控え不協和音も 宗教団体は自粛呼びかけ
米国の草の根団体や労働者、学生が、5月1日の労働者の祭典メーデーに、全米で大掛かりな“1日ボイコット”を計画している。米連邦議会で継続中の移民法改正案に対し、不法移民に有利となる改正案の実現を目指し、議員に圧力をかけることを狙ったものだ。主催者側は、米国に1200万人と推定される不法移民に対し、メーデー当日の就業ボイコットの参加を呼びかけている。しかし、ボイコットに参加すれば、雇い主から解雇される可能性があり、宗教団体からは不法移民に対し、参加しないよう異例の呼びかけが行われている。(ベリタ通信=江口惇)
不法移民をめぐる支援の輪が広がったのは、米下院議会が昨年12月に、国境警備の充実や、不法移民を「重罪人」として投獄することなどを主眼とした厳しい移民法改正案を採択したのがきっかけ。同案は、従来のように、不法移民に“恩赦”を与え、合法移民に切り替える道をまったく拒否していたため、波紋が広がった。
ことしに入って、米上院議会は、下院に比べ寛大な内容を含む法案を審議。一部の不法移民が合法的に働けるのが可能となる「ゲスト労働者」拡大案に加え、不法移民に事実上の“恩赦”を与える方向性で大筋合意した。しかし、不法移民を“「合法化」するかどうかで議員の意見が分かれ、結局審議は持ち越しになった。
こうした議会の動きに平行して、不法移民を支援する草の根団体や活動家、学生が、ことし3月から、シカゴ、ダラス、ロサンゼルス、ニューヨーク、首都ワシントンなどの都市で抗議行進を始めた。
5月1日のボイコットは、この抗議行動の延長線上にある。不法移民は6割近くがメキシコ人だが、多くが、レストラン、ホテル、建設現場など、米国人にあまり人気がない低賃金の労働に従事している。不法移民を雇うことは違法だが、賃金が安いため、密かに雇用する経営者が多い。
主催者側の狙いは、経済の底辺を支える不法移民がボイコットに参加すれば、いかに米国の経済が打撃を受けるかを知らしめるためだ。
しかし、3月から始った抗議行進に参加した不法移民が経営者から解雇される事態が相次ぎ、また保守系の移民反対派から、メキシコ国旗などを掲げて行進した中南米系の参加者に反発の声も挙がっている。
このため、これまで下院法案の強く反発し、抗議行動に理解を示していたローマ・カトリック教会(ロサンゼルス)のマホニー枢機卿が最近、不法移民に対し、メーデーの日のボイコットに参加しないよう呼び掛けをした。間もなく再開される上院の審議を見極めて行動するのが得策との見方だ。
スペイン語系放送局にも、ボイコット参加の是非をめぐって相談が目立つようになっており、ある弁護士は、不法移民にはボイコットに参加し解雇されても、文句を言える立場にない、としてボイコット参加にくぎを刺している。
一方、1日のボイコットを控え、不法移民を支持する諸団体の足並みの乱れも目立ち始めている。反戦団体も加わっていることから、移民問題と関係のない政治問題に運動の方向が変わってしまうことを懸念する声もある。
中には不法移民問題に対する急速な運動の盛り上がりから、60年代の黒人の地位向上を目指した公民権運動の再来とする見解もある。しかし、移民問題をリードする草の根指導者が出現していないなど、運動自体に脆弱性があるのは否定できないようだ。
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