2006年04月30日11時03分掲載  無料記事
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日中・広報文化交流最前線

中国における日本研究 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)

●中国の日本研究学会 
 
 中国においてどのような日本研究が行われているかは、我々日本人にとっても大いに関心がある点であろう。 
 筆者は、中国の二つの日本研究学会「中華日本学会」と「中日関係史学会」の関係者と親しくお付き合いさせて頂いているので、以下の通り紹介したい。 
 中国では団体を正式に設立するためには、中国の役所(民生部)から認可を受ける必要があるが、この二つの学会とも、民生部により正式に認可され、民生部と社会科学院から指導・監督される、国家レベルの組織である。 
(この二つの学会以外にも、日本経済、日本思想に関する学会、更には徐福(秦の始皇帝に命じられて不老不死の薬を求めて日本に行ったとされる人物)を研究する学会もある由である) 
 「中日関係史学会」:1984年創設。会員は約800名・組織。機関誌は『中日関係史研究』(季刊)。会長は武寅・中国社会科学院研究生院院長(第二期日中21世紀委員会中国側委員)である。事務局は北京市社会科学院に置かれている。 
 「中華日本学会」:1990年創設。約90の団体会員を含め、会員数は約1600名・組織。機関誌は『日本学刊』(隔月刊)。会長は現在空席であるが、前会長は、劉徳有・元文化部副部長。事務局は社会科学院日本研究所に置かれている。 
 
●日中間の学会交流 
 
 両学会とも、日本との交流を求めており、本年(2006年)春に相次いで開催された両学会の会合には筆者も招かれ、挨拶・交流をする機会があった。筆者からは、日中の学界関係者どうし、そしてその他の領域の人々との交流がもっと盛んになることを期待していること、また中国国内における日本研究の振興のために日本大使館もお手伝いできることがあればさせて頂きたいと申し述べた。(例えば、3月に中国における日本研究の重要拠点である社会科学院日本研究所に対して、日本政府からNHK衛星テレビ放送受信装置の寄贈を行った。日本からの最新の情報に日々接して貰うことで、対日理解の一助にして頂ければと期待している) 
 この会合には、北京及び地方の日本研究者達が集まり、様々な意見交換が行われた。日本をどう研究するか、日本研究者達の問題意識、悩みなども議論されたようである。 
 この会合に際して、学会事情も教えて貰う機会があった。個人会員の会費は、両学会とも共に年20人民元(約280円)程度だそうである。これで、機関誌を送ってもらったりすれば赤字であろう。社会科学院等から補助が出ている由だが、学会の台所事情は厳しいようである。 
 
 日本においては中国研究の様々な学会があるが、中国で活動している中国人の日本研究者で、日本の学会活動に参加している人は殆どいないようである。研究資金が必ずしも潤沢ではない中国人研究者にとっては、日本に出張することもままならない。特に地方(上海、天津等の恵まれた一部を除き)の研究者にとっては、研究資金不足は深刻である。 
 日本では、中国人留学生・研究者達が活発・積極的に、日本の中国研究学会活動に参加している由である。これらの中国人研究者達が、日中の学会交流に新しい刺激を与えてくれることを期待したい。日本にいる中国人の学者は、日本人に中国事情を教える人が多い。今後は、日本を深く研究した中国人学者が、日本人に日本分析を教えてくれるようになれば素晴らしい。 
 日本人研究者や、日本で研究している中国人研究者で、「中日関係史学会」、「中華日本学会」の会員になっている人はまだいないそうである。日中双方で研究をする人たちが何らかの形で交流を行い、深めていくようになることを期待したい。 
 
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。) 


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