2006年05月06日13時51分掲載  無料記事
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デモ参加者の中に“スパイ”送る 表現の自由侵害と米で抗議の声

   ブッシュ米大統領が4月下旬に米カリフォルニア州を最近4日間訪問した際、イラク戦争に抗議するデモ隊の中に、警官と「連邦職員」の2人が私服姿で紛れ込み、デモ隊のふりをして、抗議のプラカードを掲げるスパイ的な行為をしていた。また2人は、デジタルカメラで参加者の写真も撮影していた。地元警察は、大統領を護衛するシークレット・サービスからの要請を受けたものであることを明らかにした。対テロ戦争名目で、市民の自由が制約される動きが目立っているだけに、デモ参加者は「表現の自由を侵す行為」と反発している。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 米紙プレス・エンタープライズなどによると、ブッシュ大統領は4月22日、リバーサイド郡のインディアンウェルズで開かれた政治献金を集めるため共和党主催の会合に出席した。会場周辺では、戦争に反対する人々が、プラカードを掲げ抗議行動をした。 
 
 デモ参加者によると、私服姿の警官と「連邦職員」の二人は、ブッシュ支持派とにらみ合いが生じた時、最前線に出てきて写真を撮影したという。この「連邦職員」はシークレット・サービスの要員の可能性もあるが、確認はされていない。 
 
▼二転三転する地元警察の見解 
 
 地元警察の幹部は24日、シークレット・サービスからデモ隊を監視するため協力を要請されていたことを明らかにするとともに、撮影された写真はシークレット・サービスに提出されたと述べた。 
 
 これに対し、首都ワシントンのシークレット・サービス当局者は、そのような要請をしたことはないと反論。デモ隊の写真を撮影することは、シークレット・サービスの方針に反すると語った。 
 
 地元警察は25日、前日の発言を一部修正し、平穏なデモだったため、写真はシークレット・サービスには提供されなかったとトーンダウン。また写真は削除され、ファイルにも残っていないと指摘した。 
 
 シークレット・サービスが、デモ参加者の中に大統領にとって脅威となる人物がいたとの情報をつかみ、警戒を強化した可能性もあるようだ。 
 
 地元警察では、これまでデモ参加者の中に私服警官を紛れ込ませたり、写真を撮ったりすることはほとんどなかったと話している。最近の中南米系市民らの移民法改正をめぐる抗議行動にも、そうした手段は講じられなかったという。 
 
 一方、9・11米中枢同時テロ以降、ブッシュ政権は市民的自由を制限する形で、治安強化を優先させている。昨年は、国家安全保障局(NSA)による米国人に対する国際電話などの盗聴問題が発覚。また国内のイスラム教関連施設の極秘盗聴なども米メディアを通じて明らかにされている。 
 
 デモ参加者は写真が実際に破棄されたのかどうか疑っている。また今回のような行為は、市民が合衆国修正憲法の「表現の自由」を行使するのを阻害する恐れがあると反発している。 
 
 デモ参加者への監視は、1960年代に起きた公民権運動には頻繁に行われた。この運動は、黒人の地位向上を求めた国民的運動だったが、米連邦捜査局(FBI)や警察が、運動内部にスパイを送り込み、内部から撹乱行為を画策したとされている。 


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