2006年05月09日23時48分掲載
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9・11題材の初映画「UA93便」が全米上映開始 堅調な客足、館内ですすり泣きも
2001年9月11日に起きた米同時多発テロ事件を扱った初の劇場用映画「ユナイテッド93便」(ユニバーサル映画)が最近、全米で一般公開された。国際テロ組織アルカイダのメンバー4人にハイジャックされたUA93便の乗客たちが、決死の覚悟で犯人たちに立ち向かった実話を基に事件を再現している。飛行機はその後墜落し、搭乗員全員が死亡した。ハリウッドによる映画制作に当たっては、悲劇を利用しているとの懸念の声もあったが、米国やカナダでの観客動員数は、爆発的ヒットとはいえないものの、堅調な出足をみせているという。(ベリタ通信=江口惇)
「ユナイテッド93便」は、4月28日の金曜から同30日の日曜までの北米の興行収入(切符売り上げ数)で、1160万ドルを記録し、ロビン・ウイリアムズ主演のコメディー「RV」の1640万ドルに次いで第二位につけている。
「ユナイテッド93便」が映画化された背景には、ハイジャックされた乗客たちが、機体を取り戻そうと、犯人たちに対し“反乱”を起こした、そのドラマ性にあるといえる。
▼乗客の行動を英雄視
当日、ハイジャック犯は連邦議会議事堂か、あるいはホワイトハウスに体当たり攻撃を敢行しようとしていたといわれ、結果的にこれを未然に防ぐ格好になった乗客たちの行動に対し、米国社会から「英雄」の賛辞が送られた。
米紙ロサンゼルス・タイムズによると、観客は、9・11事件に対するそれぞれの思いを胸に各地の映画館に訪れたという。事件の持つ深刻さから館内は静寂が支配し、映画終了後、すすり泣く声が聞かれたという。
公式資料から事件を再現すると──。UA93便は運命の日の11日午前8時42分、米ニュージャージー州ニューアークからサンフランシスコに向けて定刻より遅れて出発した。離陸後46分経過した後、オハイオ州上空でハイジャックされた。
ハイジャック犯は4人。乗客37人と乗員5人が人質になった。犯人たちは操縦室を襲い、機長らから操縦桿を奪った。操縦室内で犯人と乗員らが、激しく口論する様子が記録されている。この間乗員が殺害されたともいわれている。
乗客は機内から携帯電話で家族や知人に連絡を取り、別の航空機がハイジャックされ、ニューヨークの世界貿易センタービルの突入したことを知らされたという。乗客たちは午前9時57分、“反乱”を決行。犯人たちが立て篭もる操縦室を急襲している最中、飛行機は午前10時過ぎ、ペンシルベニア州の田園地帯に墜落、全員が死亡した。
観客からは「あの日何が起きたのか知りたかった」「何が彼らに立ち向かう勇気を与えたのか知りたかった」などの声が聞かれた。中には、映画はつらくて見れないと思っていたが、ボーイフレンドが切符を買ったので来たという女性もいた。
9・11事件は、真珠湾攻撃、ケネディ大統領暗殺などともに、米国人に計りしれない衝撃を与えた。あるカレッジの17歳の女性は「テロ事件が起きたとき、中学校3年だった。二番目の飛行機が世界貿易センターに突入していくのを覚えている」と話していた。
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