2006年05月10日03時39分掲載
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通い婚容認のファトワに湾岸女性が反発 「家庭の基礎損なう権利侵害」と
サウジアラビアのイスラムの聖地メッカのイスラム法学学会が発布した「ミスヤール婚」と呼ばれる夫婦別居婚(通い婚)を容認するファトワ(イスラム法学者の諸事に関する法学的意見)に対して、婚期が遅れた女性の救済につながると歓迎の声がある半面、ペルシャ湾岸諸国の女性たちからは「家庭の基礎と安定を損なう」とこのファトワに対して反対の声が挙がっている。(東京=齊藤力二朗)
中東のネット紙ミドル・イースト・オンラインによると、メッカの世界イスラム連盟(通称ラービタ)のイスラム法学学会は4月12日、「ミスヤール」婚として知られる居住と金銭の権利を女性が放棄する形で行われる婚姻形態を許可する決定を行った。「ミスヤール」という語はアラビア語の湾岸方言で「訪問」を意味し、夫婦が同居ではなく、夫が妻を訪れる形の結婚の意味に使われている。
同学会は、住居が無く収入も十分でない夫婦のために二種類の結婚契約を承認した。一つは、妻が住居や生活費、共同生活の(権利の)全部又は一部を放棄し、夫が昼夜を問わず好きな時に妻の自宅を訪れることを容認する契約で、もう一つは妻が実家に居住し、夫妻が望む時に実家または他のどの場所でも会うことができる契約だ。この二つの契約やそれに類するものは、結婚の諸条件を満たし、反対理由がなければ有効と同学会は裁定した。
▼女性の悩み深くなると批判
しかし、クウェート人女性活動家ルーラー・ダシュティー女史は、「ミスヤール婚には家庭の基礎と安定を損なう要素がる。また妻が放棄する諸権利は、安定した家庭を築く基礎だ」と批判。「まず政治、開発、社会面での対策を講じるべきで、婚期を逸する女性の増加問題の解決を口実にして女性の権利を減らすミスヤール婚のような易き道を選ぶべきではない。普通の男性と結婚した女性でさえ離婚する際に多くの問題に悩むのだから、ミスヤール婚によって結婚した女性の悩みはどれ程になろうか」と反論する。
湾岸経済連盟の会長であるダシュティー女史は、先を競って女性の権利に反対する長老たち、特に政治的宗教界の長老たちを強く批判した。
さらに同女史は「そもそも問題が湾岸諸国において深刻化しているのはなぜか」と問いかけ、「アジアやトルコの一部のイスラム社会に暮らす女性は、このような問題に苦しんではいないし、地中海沿岸のマグレブ諸国でも問題はより軽微だ。女性とその権利に関する最大問題は、アラブ世界東部、特に湾岸諸国に存在する」と説明した。
同女史は「光栄なる宗教者たち」と名づける人々に対し、女性が過激で遅れた思想と対峙するために支援するよう呼びかけた。
一方、バーレン拡大女性委員会のガーダ・ジャムシール委員長は、「この婚姻契約はイスラム法的に正当なものだが、それでも私はミスヤール婚や(シーア派に於ける)快楽婚に賛成しない。理由は女性と子供の権利が侵害されるから」と語り、「私は夫婦が生涯共に暮らす普通の婚姻を正しいと信じる。女性運動やリベラル派、知識人、及び自由を信奉する全ての人は自由全般を、特に女性の自由を、防衛するために活動しなければならない」と語る。
アラブ首長国連邦(UAE)在住のイラク人宣教家アフマド・クバイシ師は、「所謂ミスヤール婚は、自分の尊厳を大切に考える女性が受け入れない『悪い』ものでありながらもイスラム法的に合法である」と言明した。
ペルシア湾岸地方の一部の社会においては結婚費用の高騰が女性が婚期を逸する一因になっていることや、夫を失った女性が「宗教的過ちを犯さず貞節を守るために」、イラン・イラク戦争(1980−1988)後に、この結婚が普及した。
婚姻契約書と結婚の証人二人、及び両者の結婚受入れが揃っていれば、結婚はイスラム法上正当と認められる。ミスヤール婚とは要するに、妻が住居と支出に於ける意権利を自発的に放棄することだ。特に夫婦に家族や連れ子が居る場合に、権利保有者が自己の権利を放棄するのに反対する理由はない。
しかし、クバイシ師は「この世のどんな王様が、私の娘をこの形態の結婚で所望しても、その王様の顔に吐唾するだろう」と語っている。
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