2006年05月23日11時47分掲載  無料記事
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米で白人優位主義の極右団体が急増 不法移民を「獲物」に例える

 メキシコ出身などの不法移民対策めぐって活発な議論が交わされている米国で、ネオナチ、KKK(クー・クラックス・クラン)、アーリア国家といった極右団体が急速に活動を活発化している。こうした団体は、白人優位主義を唱え、ヒスパニック(中南米系)出身者の流入を米国の危機と考える排他的な組織だ。不法移民問題が、政治的な焦点となる中で、ヒスパニックへの暴行なども目立っており、人権保護団体も警戒を強めている。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 人権保護団体の南部貧困法律センター(本部アラバマ)によると、2005年の極右団体数は803組織に達し、00年の602組織から5年間で約3割も増えている。 
 
 ネオナチ、スキンヘッドはドイツ独裁者ヒトラーの排他的思想を信奉する若者を中心に組織された極右団体。欧州を中心に広がり、移民労働者の抹殺などを叫んでいる。米国でも支持者を増やしている。 
 
 KKKは、もともと南北戦争後に南部で組織された白人優位の秘密結社。白い三角頭巾をかぶった姿で知られ、外国人移民排斥を唱えている。このほかユダヤ人を「悪魔の落とし子」として反ユダヤを掲げる宗教右派グループも米国には存在している。 
 
 米国では、人種や宗教、信条などの違いに反発して引き起こされる犯罪を「憎悪犯罪」と呼んでいる。極右団体はしばしば「憎悪犯罪」に関与し、殺人未遂や、爆弾テロなどの事件を起こしている。 
 
▼白人少年がメキシコ出身者襲う 
 
 ことし4月22日、テキサス州で二人の白人の少年が、メキシコ出身の16歳の少年Aを襲い、パイプで殴打される事件があった。白人少年たちは、A君の頭を踏みつけて、メキシコ出身に対して侮辱的な言葉を吐いた。 
 
 反人種差別を叫ぶ人権団体反中傷同盟は、少年が襲撃された事件に大きなショックを受けているが、関係者は、「憎悪は言葉で始るが、今回ように暴力に発展する」と述べ、今回の事件は明らかな「憎悪犯罪」だと指摘している。 
 
 反中傷同盟によると、ヒスパニックの個人に対する「憎悪犯罪」は00年以来、米連邦捜査局(FBI)のまとめでは、2500件にも達している。 
 
 多くの「憎悪犯罪」は、極右団体が直接的には関与していないケースがほとんどだ。しかし、人権団体は、反ヒスパニックを煽る極右団体の思想に影響された者が増え、「憎悪犯罪」が起きる下地が広がっていることを警戒している。 
 
 最近の不法移民対策をめぐる連邦議会の動きは、極右団体が活動を活発化させる格好のタイミングになっている。 
 
 05年10月には、ニュージャージー州のラジオ・ホストが、「米国に入ってくる不法移民を殺害せよ。腐った死体の悪臭で、他の者は逃げ去るだろう」と発言、物議を醸した。 
 
 また極右組織「アーリア国家」の指導者のウェブサイトには、不法移民を狩猟の獲物に例え、「われわれは、余暇の狩猟の標的に、新たな獲物を付け加えた。こうした汚い不法入国者を標的とする恒久的な“狩猟シーズン”を宣言する」と書かれてあった。 
 
 このほか、ネオナチは、インターネットの意見欄に「ヒスパニックは野蛮人。彼らは敵であり、われわれの文明の破壊を望んでいる」と書き込んでいた。 


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