2006年05月31日01時11分掲載  無料記事
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米女性の理数離れ進む 科学立国に影響と憂える声も

  米国の女子生徒や学生が数学、科学を敬遠する傾向が強まっている。コンピューターやサイエンスの分野で世界の最先端を走っている米国だが、人口の半分を占める女性が、今後の経済的発展の原動力となる科学分野に進出しないのは、将来の不安材料だ。ブッシュ政権のスペリングズ教育長官も、女性がもっと数学や科学に関心を持つように期待感を表明している。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 政府データによると、小学校低学年では、理数科科目の関心は男女とも大きな変化はない。しかし、高校レベルになると、次第に差が顕著になってくる。例えば、大学進学希望者が選択する高等物理などは、敬遠され、受講者が減っている。 
 
 女性の理数科離れで、大学の工学部を専攻する女子大生の占める比率も2割以下に落ち込んでいる。米人口の約53%は女性で、大学で学ぶ女性の比率は57%に達している。しかし、女性の大学進学が高くなっている割には、国際的競争力の基礎となる理数科分野に女性が関心を失っている構図が浮き彫りになっている。 
 
 女性が理数科に関心を失った理由は様々な要因が考えられるという。その一つは、家庭の環境。母親も、娘がサイエンスやコンピューターの専門分野に進むことをあまり奨励していない事情がある。 
 
 文化的にも、女性は、サービス関係の分野に就職するのを好む傾向があり、そのキャリア追求には、あまりコンピューター・サイエンスなどの学問は役に立たないと考えている。 
 
▼科学分野で06年までに600万の人材必要 
 
 しかし、女性が科学の進出していかなくなると、様々なひずみも生じてくる。教育関係者は、男女の比率格差が広がることで、科学の発展に必要な多様性とか創造性が影響を受けると心配している。 
 
 例えば、ラジウムを発見したのは、フランスの科学者キューリー夫人であり、最近では防弾チョッキの材料に使われる強度の繊維ケプラーを開発したのも女性科学者だ。 
 
 米労働省によると、2008年までに数学、科学、工学などの分野で600万人の熟練労働者が必要とされている。具体的に医学、マルチ・メディア、コンピューター・サイエンスなどで、そのほか数学や科学の教師も必要になっている。 
 
 このため女性が理数科分野に関心を持つのは、米国の国際的競争力を維持するためにも不可欠の条件になっている。 
 
 米カリフォルニア州では最近、大学関係者が女子高校生やコミュニティー・カレッジ(2年生大学)に通う女子学生を集めて、数学や科学にもっと関心を向けるようにと講習会を開いたほどだ。この中で講師は、理数科の勉強が、いかに日常の世の中で役に立っているかを力説した。 
 
 理数科を必要とする職業に就いた女性たちもパネリストとして招かれ、そのうちのある女性歯科医は、「歯科医術には、数学と科学が必要だ」と強調。これに対し、参加者のイレアナ・ロドリゲスさん(14)は、講習会で勇気づけられたと語るとともに、女性であること自体が人生の障害にならないことを学んだと述べた。 
 
 一方、スペリングズ教育長官も、女性が男性に比べ、なぜ科学の分野などに進出しないのか教育省傘下の研究所に調査を指示している。オレゴン州選出のロン・ワイデン上院議員(民主党)は、人口の半分を占める女性を活用しなければ、米国の国際的競争力は維持しえなくなると警鐘を鳴らしている。 


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