2006年06月04日09時00分掲載
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日中・広報文化交流最前線
青島市で高まる柔道人気 井出敬二(在中国日本大使館広報文化センター長)
5月末、筆者は、山東省青島市における柔道の普及状況を視察する機会があったので、以下の通り報告したい。これは、山下泰裕・東海大学体育学部教授から、「青島市は柔道が盛んなので、見に行ってみて下さい」と言われたことに触発されたものである。
●五輪メダリストも輩出
青島市からは、女子柔道で五輪銀メダリストが二名出ている。シドニー五輪銀メダリスト李淑芳、アテネ五輪銀メダリスト劉霞の二名である。
これまで五輪でメダルをとった中国柔道選手は女子のみであり、男子は未だ一人もいないそうである。何故か?と尋ねたところ、中国の柔道関係者は、「中国の女性は強いから」と笑って答える。
青島市で柔道が人気があるのは、山東省の人達は背が高く、スポーツ選手向きだからかもしれない。(その他に強い柔道選手が出ているのは東北地方がある。)青島市では、毎年秋に国際柔道大会が開催されており、中国で一番柔道が盛んで人気がある場所と言えそうである。
青島市内には、柔道が授業で教えられている小学校があると聞いて、訪問してみた。この「青島四流中路第一小学校」では、2004年から柔道が体育の正規の授業として教えられている。学校の廊下には、柔道にちなんで「礼儀」、「克己」といった標語が貼りだしてあった。校長先生によれば、子供達も、柔道を学んでから礼儀正しくなり、精神面で非常に良い方向に変わった由である。日本の素晴らしい点を、中国の子供達が学んでくれれば嬉しいことである。この小学校の第一回校内柔道大会が開催され、筆者はその決勝戦を参観する機会に恵まれた。この大会には全校児童約700名の約3割にあたる200名が参加した由である。筆者が視察した折には、学校の先生達が筆者を子供達に紹介し、日本との友好の重要性についても教えていた。中国国内で小学校は数多くあるが、その中でも、この小学校は、最も熱心に柔道に取り組んでいると言えそうである。
この小学校以外に、青島市内の中高校や柔道場などで柔道を練習している人数は約千人いる由。更にそれ以外にも潜在的に柔道を習いたい青少年は多数いる由。
●日本との交流拠点に柔道場を
青島市の柔道人気を作ってきた中心的人物は、徐殿平・青島市柔道協会執行会長である。徐氏は、1980年代初めに柔道の練習を青島の砂浜で開始し、テレビドラマ『姿三四郎』にも熱中して、柔道に励んだ由である。これまで数多くの柔道選手及び指導者を養成しており、現在は北京五輪に向けて中国女子柔道チームの総監督を務めている。徐氏は、中国柔道協会で、広報、普及担当でもあり、「中国では柔道はまだ人気がない」「柔道を中国にもっと広めたい」と筆者に語ってくれた。北京五輪の後は、青島市で青少年への柔道普及にもっと時間を割きたいと述べていた。
青島市には韓国人が10万人近くいるとも言われる。これに対し、日本人の人数は、2千名余である。韓国のプレゼンスはここかしこに見られる。武道の分野も例外ではなく、青島市内には、テコンドーの道場が既に少なくとも20箇所は設置されている由である。青島市の柔道関係者からは、日本との交流の拠点となる柔道場が欲しいとの声があった。
北京でも剣道、合気道、空手を愛好している中国人達が活動している。中国の子供や青少年達が日本の武道を通じて、日本に親しめる機会を増やしていければ素晴らしいと思う。
(つづく)
(本稿中の意見は、筆者の個人的意見であり、筆者の所属する組織の意見を代表するものではない。)
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