2006年06月06日06時26分掲載
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キューバへの反感エスカレート 米フロリダ州が大学対象に訪問規制
米フロリダ州が、州の資金で運営されている州立大学や短大に対し、研究目的であれ、州の資金を使ってキューバを訪問すれば違法─とする強硬姿勢を打ち出した。ことし初めに、州立フロリダ国際大学(FIU)の教授とその妻が、「キューバのエージェント」として逮捕されたのが規制強化のきっかけ。これに対し、一部の学者からは、高い水準にあるフロリダのキューバ研究が、下火になると批判の声が上がっている。(ベリタ通信=苅田保)
フロリダ州は、海を挟んでキューバと近接している。キューバは、カストロ国家評議会議長による共産党一党独裁の国で、こうしたキューバの現状を嫌って、海を越えてフロリダ州に漂着する難民が多い。
米国がキューバ難民を受け入れているのは、カストロ体制への反感、嫌悪によるものだ。米国務省はキューバを「テロ支援国家」の指定し、長年経済制裁も科している。
こうした中で、FIUの教授カルロス・アルバレスと妻エルサが、キューバ政府に対し、フロリダのキューバ人社会の情報を極秘に送っていた事実がわかり、ことし1月に逮捕された。
捜査当局は数年前から自宅の盗聴などを行い、情報を集めていた。アルバレスは、キューバを何度か訪問していた。妻もFIUに勤め、カウンセラーの仕事をしていた。
この事態を重視した州議会は、州立大学の教官が、州の予算を使ってキューバを訪問するのを禁止する法案を可決。5月末には、ジェブ・ブッシュ州知事(ブッシュ大統領の実弟)が法案に署名した。発効は7月1日から。
新法は、イラン、北朝鮮など5カ国の「テロ支援国家」に州の資金を使って、大学関係者や学生が、旅行することを禁じている。米メディアは、フロリダ州のキューバとの距離的近さから、この新法は、キューバを標的にしたものと分析している。
法律案作りに奔走したのは、デイビッド・リベラ州議員(共和党)。キューバは独裁国家であり、そうした国に赴いて研究しても意味がないとの立場を貫いている。
▼研究に打撃と懸念の声
大学の教官は、州から給料を受けており、今後は、自費のキューバ旅行と主張しても、自費自体、給料から支払われている可能性もあり、キューバ旅行がかなりの制約を受けそうだ。
これに対し、フロリダ大学(UF)で農業経済を教えるビル・メッシナ氏は、この新法で、評判の高かったフロリダでのキューバ研究が影響を受けるだろうと指摘。「キューバに関してこれまで得られていた最高の情報が、最悪の情報になるだろう」と警告している。
FIUのウバ・デ・アラゴン教授は、米国はキューバ研究を奨励すべきであって、それを阻害するような行動を取るべきではないと述べている。相手の国にはいって、その国がどう動いているかを知ることは、大きな意味があると力説する。
同教授は、仮にイラク戦争前に米国が事前に多くの情報を得ていたら、多くの誤りを犯さなくて済んだはずだと述べている。
当面、マイアミ大学など私立大学は規制の対象外になる。しかし、州議会では、州からの定額の資金を得ていれば、私立大学も規制対象になるような法案を検討している。
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