2006年06月06日22時55分掲載
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妊娠による米キャスター降板に抗議書簡 性差別だと女性団体
米大手ネットワークのABCテレビの女性アンカー、エリザベス・バルガスさん(43)が、看板報道番組「ワールド・ニュース・ツナイト」のアンカー役を5月末に降板した。ことし1月に共同アンカーだったボブ・ウッドラフさんがイラク戦争取材中、重傷を負ってから、一人で番組を担当していた。降板の理由は、夏の出産を控え、医師から過重な労働を控えるように忠告されたためという。しかし、突然の降板劇に、女性支援組織「NOW」など3団体が、ABC首脳陣に対し、降板は「女性への差別だ」として抗議の書簡を送る騒ぎになっている。(ベリタ通信=有馬洋行)
ニュース番組のアンカーはキャスターと同義で、アンカーマンの人気で視聴者を番組にひきとめる重要な役目を負う。一種の番組の顔でもある。アンカー役に抜擢されることはメディアの世界では、大きな名誉になっており、バルガスさんは当時、女性の地位向上の意味も込めて、この仕事で成功を収めることが重要だと語っていた。
「ワールド・ニュース・ツナイト」は、長年人気アンカーマンだったピーター・ジェニングス氏が昨年肺がんで死去したため、ウッドラフ・バルガスのコンビで昨年12月再出発した。ところが、ことし1月にイラク戦争の現場取材に出ていたウッドラフさんが、爆弾で頭などに重傷を負い、職場から離脱。運の悪いことに、その後番組の視聴率も急降下していた。
米大手ネットワークは、NBC、CBS、ABCがそれぞれ夜に看板報道番組を持っており、キャスターの人気で視聴率が変動するともいわれている。最近の調査では、ABCはニュースの視聴率で3位に転落していた。
▼局側は「本人の希望」
こうしたネットワーク局の激しい視聴率競争の最中に、バルガスさんが突然降板したため、女性支援団体などから、妊娠による降板を疑問視する声が挙がった。また一部の女権拡張論者(フェミニスト)は、仕事と育児は両立できないとの認識が社会に広がるとことを警戒している。
「NOW」など3団体は、書簡の中で、「これは明らかに過去の女性差別の時代に逆行するシグナル」と批判し、バルガスさんのアンカー役継続などを要求している。
一連の騒ぎに、ABC当局は、バルガスさんの降板は、本人からの要請に基づくものだとしている。
米メディアによると、バルガスさんには現在、シンガーソング・ライターの夫との間に、3歳の男の子があるが、最初の分娩は帝王切開だった。第二子も帝王切開で産むことになっているため、医師から無理をしないようアドバイスを受けたという。
しかし、出産後の「ワールド・ニュース・ツナイト」への復帰は検討されなかったようだ。出産後はABCの社会派番組「20/20」の共同アンカーになることが予定されている。
バルガスさんの後任は、ベテランのチャールズ・ギブソン氏。今後、NBCのブライアン・ウィリアムズ氏、9月からCBSに登場するケイティー・クーリックさん(女性)らとの間で、激しい視聴率競争が繰り広げられることになりそうだ。
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