2006年06月07日22時26分掲載
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神を問い為政者の道を問う ブッシュが黙殺したイラン大統領書簡全文(下)
米国は故意にイランの核開発問題でイラン側が拒むような条件をあえてつけた「対話の呼びかけ」を行なっている。イスラムを多く含む第三世界諸国の世論に対する形ばかりのジェスチャーをどこまで米国は続けるのか。以下は5月8日付でイランのマフムード・アフマディネジャド大統領がブッシュ米大統領に送った公開質問状全文の後半部だ。(TUP速報)
■アフマディネジャド・イラン大統領のブッシュ米大統領への書簡 (下)
大統領殿
今後世界はさらにどれだけの間このような状況を許容しえましょうか。
この趨勢は世界をいずこに導いていくのでしょう。
どれくらい長いあいだ世界の人々は一部の支配者の誤った決定の代償を支払わなければならないのでしょう。これからなおどれほどのあいだ不安の影(大量破壊兵器の蓄積がひきおこす)が世界の人々を追いかけることでしょう。
罪のない男女、子どもの血が街路に流され、人々の住む家が破壊されて彼らの頭上に崩れ落ちてくるという事態が、今後どれほど続くのでしょうか。
あなたはこの世界の現状にご満足でしょうか。
現在の政策が続けられるとお考えでしょうか。
もし、いま国防や軍事作戦や部隊の移動に費やされている何十億ドルもの予算が、そうでなく、貧困国への投資や援助に、医療の推進とさまざまの疾病との闘いに、心身の教育と改善に、自然災害被災者の援助に、雇用機会の創出に、生産および開発プロジェクトと貧困の軽減に、平和の確立に、紛争当事国間の仲裁に、人種紛争や民族紛争その他の紛争の火を鎮めるために投入されていたならば、世界は今どのようになっているでしょうか。それは貴国の政府と国民にとって当然に誇るべきものとなっているのではありませんか。
あなたの政権の政治的、経済的立場は今より強いのではありませんか。
これを申し上げるのは何より残念なことですが、もしそのようであったなら、アメリカ政府に対して世界中で増大する一方の憎しみは存在したでしょうか。
大統領殿、私は誰をも苦しめようとの意図を持っておりません。
しかし、もし預言者アブラハム、イサーク、ヤコブ、イシュマエル、ヨセフ、あるいはイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)が今日私たちとともにあったならば、かかる行いをどう裁くことでしょうか。私たちははたして、正義があまねく行き渡りイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)のまします約束された世界ではたすべき役割を与えられるでしょうか。そもそも私たちはそこに入ることを認
められるでしょうか。
私の基本的な問いは、他の諸国と関わり合う、今よりよい道はないのかということです。
こんにち世界には何億ものキリスト教徒がおり、何億ものモスリムがおり、モーゼ(彼の上に平安あれ)の教えに従う何百万もの人々(訳注:ユダヤ教徒)がおります。すべての神聖なる宗教は、ひとつの言葉を共有し尊んでいます。それが「一神教」であり、唯一なる神を信じ、他の神を世界に認めないということです。
聖コーランは、この共通の言葉を強調し、全ての神聖なる宗教の信奉者に呼びかけています。
[3.64]
言ってやるがいい。おお、かの啓典の信奉者たちよ、我々とお前たちの間の公正な提案のもとに来たれ。我々はアッラーのほかの何ものにも仕えず、彼よりほかにいかなるものにも与することなく、我々のうちのいかなる者もアッラーをおいてほかの者を主と見做さないと。だが、もし彼らが背き去るなら言ってやるがいい、我々がモスリムであることを証しせよと。 (イムランの章)
大統領殿
神聖なる詩句によれば、私たちはみな、唯一の神を崇め神の遣わされた預言者の教えに従えと呼びかけられてきました。
「世界のあらゆる強き者の上にあり、御心にかなう全てのことをなしあたう唯一の神を崇めよ」
「隠れたるものも表れたるものもともに、過去も未来もともに知りたまう主、そのしもべの心に起るすべてのことを知りたまい、彼らの行いを書き記したまう主」
「主は天国と地上の持ち主にして、全ての宇宙は彼のさばきの庭なり」
「宇宙のための計画は主の御手によりなされ、主はそのしもべに慈悲と罪の許しのこの上なき知らせを与えたまう」
「主は虐げられたる者の友にして、虐げる者の敵なり」
「主は憐れみ深く、慈悲あまねし」
「主は信仰厚き者の頼りとするところにして、彼らを闇より光へと導きたまう」
「主はそのしもべの行いの証人なり」
「主はしもべらに、信仰厚く、よき行いをなせと呼びかけたまい、高潔有徳の道にとどまり、堅忍不抜たれと求めたまう」
「預言者に従うことをしもべに求めたまい、しもべらの行いの証人なり」
「世の終わりに厳しき裁きを受くべきは、この世の生を選びて主に従わず、主のしもべを虐げし者のみなり」
「世の終わりに良き裁きを受け永遠の天国に入るは、主を恐れ、みだらなる己に従わざりし者なり」
私たちは、神に遣わされた預言者の教えに立ち戻ることが、救いに至る唯一の道であると信じます。閣下はイエス(彼の上に平安あれ)の教えに従う方であり、地上を有徳の人々が治めるという神の約束を信じておられるとお聞きしています。
私たちはまたイエス・キリスト(彼の上に平安あれ)が全能の方のつかわされた偉大なる預言者の一人であると信じています。彼はコーランにおいても繰り返し讃えられております。イエス(彼の上に平安あれ)はコーランにも引用されています[19.36]。だから、確かにアッラーは私の主であるとともに、あなたがたの主なのだ
から、ゆえに彼に仕えよ、これが正しい道である(マリアムの章)。
全能なる方への奉仕と服従は神の言葉を伝えるすべての者の信条です。
ヨーロッパ、アジア、アフリカ、アメリカ、太平洋その他の世界の全ての人々の神はひとつです。彼が、そのしもべを導き、尊厳を与える全能なる方なのです。彼は人類に偉大さをお与えになりました。
また聖なる書物を読んでみましょう。
「全能なる神は彼の預言者を奇跡と明らかなる徴とともに遣わして人々を導き、神の徴を見せて彼らを罪と穢れから清められた。そして、この書物と秤(balance)を送り、人々が正義を示し、反逆の徒を避けるようになされた」
上記のような詩句はみな、なんらかの形で、聖書にも見出されるものです。
神の預言者はこう約束しました。
「すべての人類が全能の方の裁きの庭に集い、彼らの行ないを調べられる日が来る。善人は天国に、悪をなした者は神の罰に定められる」
私たちはともに、このような日があると信じていると私は信じますが、支配者の行為の善悪を量るのはたやすいことではありません。我々はそれぞれの国民と、私たちの行為に直接であれ間接であれ影響を被る全ての人々に対して責任を負わなければならないからです。
すべての預言者は、人間のために平和と穏やかな暮らしについて語っています。一神教と正義と人間の尊厳への尊重とにもとづいて。
私たちがみな、これらの原則、すなわち一神教、神への崇拝、人間の尊厳の尊重、終わりの日を信ずることという原則を信じ、それを守るようになるなら、現在の世界の諸問題は克服することができ(それら諸問題は、全能の方と預言者の教えとに対する不服従の結果なのですから)、私たちの実績を改善することができるとお思いになりませんか。
これらの原則を信ずることが、平和と友好と正義を推進し保証するのだとはお考えになりませんか。
上来私の述べ来たった諸原則は、文字になったものも、ならなかったものもともに、普遍的に尊ばれているとはお考えになりませんか。
大統領はこの招待をお受けにはなりませんか。すなわち、預言者の教えと一神教と正義へと真に回帰すること、人間の尊厳、全能なる方およびその預言者への服従を大切にすることです。
大統領殿
歴史は、抑圧的で残酷な政府は長続きしないことを我々に教えています。神は、人間たちの運命を彼らの手に託してきました。全能なる方は宇宙と人類をそれらの恣意に委ねるのではありません。諸国政府の願望と計画に反して発生した物事はたくさんあります。それは、より高い力が働いていること、すべてのできごとは神に
よって決定されているのであることを示しています。
こんにち世界に見られる変化の兆候を否定することができるでしょうか。
こんにちの世界の状況は、10年前と似たようなものでしょうか。変化が速やかに起っており、それは凄まじい速度で出現するのです。
世界の人々は現状に満足しておらず、世界の多数の強大な指導者の公約や意見などほとんど気にもとめていません。世界の多くの人々が安全を脅かされていることを感じ、不穏な情勢と戦争の広まることに反対しており、いかがわしい政策は認めず受け入れません。
人々は、持てる者と持たざる者の、豊かな国と貧しき国の間の乖離がますます拡大することに抗議しています。
人々は増大しゆく腐敗にすっかり嫌気がさしています。
多くの国の人々が、自分たちの文化の基盤に攻撃が加えられ家族が解体してゆくことに怒りをもっています。また、温かな心遣いと親身な同情が薄れつつある風潮を嘆かわしく思っています。世界の人々は国際機関に信頼を置いていませんが、これは人々の権利がそれら機関によって擁護されていないからです。
自由主義と西洋民主主義は、人類の理想を実現するのには役立ってきませんでした。今日、これら二つの価値観は破産しています。洞察力のある人々にはすでに自由民主主義制度のイデオロギーと思想が崩壊する音が聞こえるのです。
私たちはますます世界中の人々が一つの焦点に結集しつつあるのを目にしています。それは全能なる神です。疑いなく神と預言者の教えへの信仰を通じてこそ、人々は自分たちの問題を克服するのです。私のあなたへの問いは「この人々のうちに加わることをお望みになりませんか」ということです。
大統領殿
私たちの好むと好まざるとに拘わらず、世界は全能なる方への信仰と正義へと引きつけられていくのであり、神の意思がすべての存在を凌駕することになるのです。
ヴァサラーム・アラマン・アタバ=アル ホダ (平和よまことの道を歩む者にのみあれ)*
イラン・イスラム共和国大統領
マフムード・アフマディ=ネジャド
(*訳注 結びの挨拶は、預言者ムハンマドがヒジュラ暦6年(西暦625年前後)にビザンチンとペルシャの皇帝に送った「イスラムに改宗しないならば、貴殿は貴国国民の悪業の責を負うこととなろう」という主旨の書簡の一節だとされています。
ニューヨーク・サンという新聞が、これは宣戦布告だという論説を書き、ほかにも、これはファンダメンタリストのブッシュにわざとイスラムへの改宗を呼びかけたものだという論評も出て、、ユダヤ系のサイトなどで大いに取りざたされていますが、これらの主張が当たっているとは思えません。
同じ一神教どうしではないかと呼びかけるこの書簡を、ブッシュにイスラムへの改宗を迫るものと解釈できるでしょうか。
ムハンマドがイスラームの防衛のために武力で戦った地域はアラビア半島を出るものではなかったことに照らすなら、この結びの句の意味は、ちょうどムハンマドの時代よりあとのビザンチンやペルシャがそうであったように、今はキリスト教や西洋民主主義の栄えている欧米も、のちにはイスラム圏の仲間入りをすることにな
るぞ、という意味に取るほうが妥当ではないでしょうか。同論説は、ムハンマドがビザンチンとペルシャに攻撃をしかけたかのような書き方です。いまなお、右手にコーラン、左手に剣の先入観に囚われているのでしょう。
ニューヨーク・サンの記事は下記をはじめ多くのサイトやブログで引用されていま
す。
gypsyscholarship.blogspot.com/2006/05/history-lesson-vasalam-ala-man-atabaal.html
)
原文URL:
http://www.globalsecurity.org/wmd/library/news/iran/2006/ira
n-060510-irna01.htm
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