2006年06月12日20時47分掲載
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ワニの連続襲撃で捕獲業者が大忙し 米フロリダ州
ことし5月に米フロリダ州で3人の女性が相次いでワニに襲われ、死亡した。この事件を契機に、約100万匹のワニが生息しているといわれる同州には、いつワニに襲われるかもしれないと、市民がパニック状態になった。この余波は依然続いており、このお蔭でワニの捕獲業者は大忙しだという。しかし、獰猛な爬虫類のワニの自然な姿を一目見ようと、ことしの夏も多くの観光客がフロリダを訪れる見通しといわれる。(ベリタ通信=有馬洋行)
米南東端に位置し、亜熱帯気候のフロリダには、河沼や運河にワニが生息している。フロリダが、全米の中でも住宅開発が近年最も盛んで、この影響で、湿原に住んでいたワニが行き場を失い、えさや水場を求めて住宅地周辺に出没するようになった。
5月中に3人の女性がワニに襲われ死亡したが、襲われた場所はすべて別々。フロリダ全州にわたってワニが、幅広く生息していることを物語っている。
同月初めに、ジョギング中だった28歳の女性が、水辺にいたときに襲われ死亡。現場近くで捕獲された体長3メートルのワニのお腹から、食いちぎられた両腕が発見された。その5日後には、湖でシュノーケルを使って潜水をしていた23歳の女性が襲われて死亡。同じ日にワニにかまれた傷のある43歳の女性の遺体も発見された。
米紙ロサンゼルス・タイムズなどによると、この3件の襲撃事件は、市民に恐怖感を与え、州のワニに対する苦情ホットラインには、以後1日200件の電話が殺到している。州では、ワニ退治は、民間の業者に委託しているが、38の契約業者も、相次ぐ派遣要請にくたくたの状態だという。
ワニに人が襲われるのは、人が犬にかまれたり、雷に打たれるより可能性は低いといわれる。しかし、ワニに襲われるイメージの方が強烈なため、人々の不安感が増幅された格好だ。
▼銃で殺害は至難
ワニに遭遇した人の中には、自宅から銃を持ち出して勇敢に退治しようとする者もいる。しかし、ワニを殺害するのは、身の危険が差し迫った状態でない限り、許可なくして行えば、違法行為という。しかも、ワニは急所の脳が小さく、銃で命中させるのは至難のわざという。
ワニは元々、人を恐れる動物という。人がワニを恐れるよりも、ずっとワニの方が人を恐れているといわれる。
しかし、観光客をボートに乗せ、ワニ見物を企画した旅行ガイドが、水の中からワニを水面上におびき寄せるため、えさのマシュマロやポップコーンをやり始めたことなどで、この原則が崩れたという。
人からえさを受け取るうちに、ワニは、えさを与えてくれる人間自体をえさだと考えるようになったからだ。このため州当局では、ワニにえさを与えないように呼びかけている。
米国では、ワニは1960年代にワニ皮の靴やバッグを製造するため、多数殺害された。70代に入り、生息数が減少してきたため、米政府は、保護政策を実施している。
人口1800万人のフロリダには、年間7500万人の観光客が訪れるといわれる。その中には、猛々しいワニの姿を見ようと訪れる人も多いが、今回のワニ襲撃事件は、人と野生動物が自然の中でどう調和を図って共存していくべきかを、改めて問う形になっている。
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