2006年06月13日07時36分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200606130736072
「命の恩人」の白骨死体を発見、米パームスプリングスの山中
ことし5月、米カリフォルニア州南東部のパームスプリングスの山中を3日間にわたってさまよった男女のカップルが、奇跡的に救出された。彼らが発見されるまで、何とか生き延びられたのは、彼らが偶然山中で発見した、誰かが残していったバックパックだった。中には、食料などが残っており、これを食べながら救出を待った。カップルにとっては、このバックパックを残していった人物は命の恩人になる。しかし、その命の恩人も、実は1年前に同じ山中で遭難し、消息を絶っていた人物だった。最近、その人物と思われる白骨死体が発見された。(ベリタ通信=江口惇)
ダラスから訪れていたブランドン・デーさん(28)とガールフレンドのジーナ・アレンさん(24)は、間もなく自分たちが遭難するとは夢にも思わず、パームスプリングスの山中ハイキングを楽しんでいた。
初めのうちは、周囲で人の声が聞こえていたが、間もなく道に迷ったことに気付いた。高度の高い山中では、5月でも気温が急激に下がる。凍死しないために、夜は洞窟の中で睡眠を取った。
捜索隊が出動しても、地形の入り組んだ山中では、自分たちの居場所を発見するのは、かなり難しいことが予想された。
その後、二人は、山中を彷徨する中で、偶然どこかのハイカーが使っていたキャンプの跡地にたどり着いた。そこにあったバックパックに中には、食料品が残されていた。
ほかにマッチや、ハイカーが書いていた日記も残されていた。その時は、このハイカーが誰で、何をしていたのかなどは、二人にとっては知る由もなかった。
▼生存の願いむなしく
そのハイカーは、バージニア州出身のジョン・ドノバンさん(60)だった。2005年5月にハイキングに出かけたが、その後行方不明になり、捜索が行われていた。
デーさんたちカップルは、残されていたマッチを使い、付近の木々に火を放った。煙を上げることで発見をしやすくするのが目的だったが、これが奏功し、二人は無事救出された。
救出後、事情を知ったカップルは「自分たちの命を助けてくれたドノバンさんにお礼がいいたい」と話していた。
カップルの話を受け、ドノバンさんの捜索活動が再開された。山岳救助隊は、ドノバンさんはキャンプをしていた場所から、さほど遠くない地点にいるはずとの目星をつけ、捜索を続けた。ひょっとしたら生存しているかもしれないとの思いもあったという。
今月4日、上空にヘリが舞う中で、山岳救助隊が白骨化した遺体を発見した。キャンプから100メートルも離れていない地点だった。しかし現場は立ち入るのが難しく、ヘリで、白骨死体を回収した。特に動物などに襲われた形跡はみられていない。
ドノバンさんの日記によると、「水がなくなり、食料もなくなった」との記述や、死亡したら「バージアの墓地のどこかに埋葬してほしい」との書き込みがあった。
ドノバンさんたちの友人は、「ようやく、彼に“グッバイ”といえるようになった。しかし、彼を失い寂しい。今日は悲しみの日だ」などと話している。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。