2006年06月13日08時31分掲載
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運転中に逆上する人は「間欠性の爆発障害」の恐れ 20人に1人に症状と米研究者が指摘
車を運転中に相手の運転の仕方に苛立って、逆上するようなことがあれば、要注意だと、米ハーバードとシカゴ両大学の研究者が、警告している。ドライバーの態度が暴力的に変化する状態は、英語で「ロード・レイジ」(路上の逆上)と呼ばれているが、研究者たちは、こうした怒りは一種の精神的な障害が引き金になっていると指摘している。このため人によっては、精神を鎮める目的で、薬の服用も必要になるという。(ベリタ通信=有馬洋行)
米シカゴ・トリビューンなどによると、運転中に切れて、相手の運転手を罵倒したり、あるいは暴力を振るったりする人は、「間欠性爆発性障害(IED)」の患者である可能性があるという。
IEDは、抑制できない怒りが、繰り返し起きる症状で、人に危害を加えたり、器物を壊したりする行動を取ることを特徴とする。IEDを研究しているシカゴ大のエミル・コッカロ教授が04年に、研究調査を基に、IEDという精神障害の存在を初めて明らかにした。
車の運転中の起きる怒りの症状のほか、配偶者への家庭内暴力などもIEDが原因と、研究者は指摘している。
コッカロ教授らは最近、04年に発表した暫定資料を最終的にまとめ、医学誌にその結果を公表した。調査は01年から03年にかけて実施され、18歳以上の9282人の面接調査した。
その結果、米国人の20人に一人がIEDと呼ばれる障害を持っていることがわかった。単純な計算では、米国全体で、潜在的患者数は1500万人に達するとみられている。1年間に怒りを爆発させる回数は、平均で5回という。
▼10代に発現
コッカロ教授は「われわれの研究は、IEDがまさに存在していることを示唆している」と述べ、人々がIEDの存在に早く気付き、適切な治療を受ける必要性を指摘している。
IEDが発現するのは、ティーンエージャーの世代という。男の子は13歳、女の子は19歳くらいで症状が始るという。IEDの症状を持つ者は、その後うつ病やアルコール中毒などの症状を引き起こす危険性があるとされる。IEDの症状を持つ者には、脳波にも通常の人とは異なる動きがみられるという。
IEDの典型的な症状とされる「ロード・レイジ」は、実際は日常生活の中で、かなり発生している。
米カリフォルニア州では、ことし1月から5月にかけて、銃の発射で、ドライバーが死亡する事件が相次いでいる。リバーサイド郡のハイウエー91号では、ドライバー2人が、別の車の運転手に射殺された。
また駐車場で車が衝突したことで双方が口論となり、27歳の男性に対し、相手の運転手が銃を6発発射した。
銃の所有が憲法で認められている米国では、車のダッシュボードに銃を入れている者も多く、「ロード・レイジ」が悲劇的な結末を迎える事態になっている。
IEDは、薬の服用で怒りを抑制できるが、コッカロ教授は、怒りを抑制できないような状況に直面したら、直ちにその場所から立ち去り、頭を冷やすことが得策だとアドバイスしている。
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