2006年06月14日17時27分掲載  無料記事
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覚せい剤服用して母乳、赤ん坊が死亡 米社会を蝕む薬物汚染

  麻薬の溺れた二人の女性のニュースが最近、米メディアの地方欄などに掲載された。一人は幼稚園の先生で、覚せい剤のコカインを服用し、朦朧とした中で園児に接していた。もう一人は覚せい剤の常用者で、生後3カ月に赤ん坊に、覚せい剤に汚染された母乳を与えていたため、赤ん坊が死亡している。幼稚園の先生は、有罪判決が出たが、もう1人の母親は、裁判が現在進行中だ。日常の生活の中に、麻薬が深く浸透している米国社会の負の断面を垣間見せるケースといえる。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
 米カリフォルニア州フレンチバレー。同市は、ロサンゼルスから車で約1時間半の山間部に位置する。最近の宅地開発で、中流階級の人々が多数流入している。このフレンチバレーの小学校内にある幼稚園で、覚せい剤の使用・所持で教師のリン・フィリピニ(47)が逮捕されたのは、昨年の11月のことだ。 
 
 米紙プレス・エンタープライズなどによると、フィリピニはコカインを使用した後、学校に出勤していた。職場の仲間が、奇抜な行動を取るフィリピニの様子に気付き、麻薬摂取が明らかになった。捜査当局が検査したところ、彼女の血中から、生命に危険な量のコカインが検出された。 
 
 警察が彼女のアパートを捜索した結果、13グラムのコカインを発見、押収した。覚せい剤に溺れるようになったのは、長年連れ添った夫との離婚や、新しい職場環境、それに弟ががんにかかるなど、精神的な重圧が原因とされている。 
 
 事件発覚後、一時薬物治療のセンターに入院した。ことし5月、裁判所は、フィリピニに対し、3年間の保護観察と、計180日間に及ぶ週末の刑務所服役を命じた。かなりの寛大な判決で、学校の保護者に中には、刑が甘いとの批判の声も上がっているが、裁判長は、「チャンスを与える」と述べた。しかし、今後教職にとどまるのは難しいという。 
 
▼赤ちゃんの体内から覚せい剤 
 
 一方、赤ん坊に覚せい剤汚染の母乳を飲ませていた罪で裁判を受けているのは、カリフォルニア州のエミー・プリエン(34)。事件が起きたのは4年前の2002年1月。 
 
 翌朝プリエンが目を覚ますと、赤ん坊が死んでいた。当初は、突然死と思われたが、健康な赤ん坊が突然死亡したため、司法解剖を行った。その結果、赤ん坊の体内から覚せい剤が検出された。検察は、第二級殺人罪で起訴し、一審は有罪となり、禁固15年以上の刑が宣告された。 
 
 しかし、控訴審は昨年9月、第二級殺人罪を取り消し、幼児に危害を加えた罪などに絞って刑を言い渡すように命じた。このため現在再度審理が行われている。 
 
 プリエンは、これまで赤ん坊に授乳していたときは、覚せい剤の使用をやめていたと供述している。その上で、当時ルームメートだった男性が、麻薬業者で、この男性が、何らかの形で赤ん坊に覚せい剤を飲ませたと主張している。 
 
 検察側が、プリエンの供述には信憑性がないとしている。プリエンは、15歳で結婚したが、高校時代に、マリファナ、スピード、コカイン、LSDなどの麻薬を常用していたという。 
 
 再審理でも、検察側はプリエンに対し妊娠中、もしくは授乳時に薬物を使用していたかと再度質問しているが、プリエンはこれを否定している。また子どもたちの前では、麻薬を摂取しないようにしていたとも供述している。 


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