2006年06月17日18時59分掲載
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子どもへのレイプ犯は死刑に 米国で厳罰求める声高まるが、違憲との指摘も
性犯罪が大きな社会問題になっている米国で、子どもに対する性犯罪者を厳しく処罰する傾向が強まっている。性犯罪を犯した者が、刑務所で服役し、釈放された後に再び事件を起こすことが多発しているためだ。これまで5つの州が、子どもに対し性犯罪を重ねて犯した者に対し、死刑を適用できる州法を成立させている。しかし、死刑に反対する法律学者は、殺人を犯していないレイプ犯などに死刑を適用することは、あまりに過酷であり、憲法違反だと反論している。(ベリタ通信=江口惇)
米メディアによると、米オクラホマ州では6月9日、14歳以下の未成年に、二度以上、レイプなどの性犯罪を犯した者に対し、死刑もしくは終身刑(仮釈放なし)を科すのを可能とする州法を成立させた。未成年への性犯罪者に対し、死刑が適用できるとの州法を成立させたのは、サウスカロライナ、フロリダ、ルイジアナ、モンタナ各州に次いで5番目。
レイプ犯に死刑適用は過酷だとの批判に対し、州議員らは、現在の法律は「人」を殺害した者に死刑適用を認めている。レイプなどは人の「心」を“殺す”犯行であり、死刑を適用するのは不思議ではないとしている。
オクラホマ州に先立つ形で同種の州法を成立させたサウスカロライナでは、11歳以下の未成年に性犯罪を犯した者に死刑適用を認めている。
一方、カンザス州では、性犯罪者が、14歳以下の子どもに対して性犯罪を繰り返せば、有罪が決まるごとに、3回にわたって刑罰を重くする州法を7月から実施する。性的常習者が3回有罪になれば、仮釈放の可能性のない終身刑が適用される。
こうした各州の刑罰強化の動きに対し、死刑に反対するグループや学者が「憲法違反だ」と反発している。
根拠は1977年の米連邦最高裁の判例。判決は成人女性をレイプした者に対し死刑を科すことは、刑罰のバランス上、できないと判示している。
当時の判事の多数意見では、殺人の場合は、人命が失われているが、レイプ犯罪は、人命が失われていないと指摘。その上で、被害者には心の傷は残るものの、立ち直ることも不可能ではないと述べ、レイプ犯に死刑を科すことは、米合衆国憲法修正8条の「残酷なつ異常な刑罰の禁止」に違反すると判断している。
死刑反対論者の中には、レイプ犯罪を犯せば死刑になるとの法律は、逆に子どもの命が危機に陥る恐れがあるとの声も上がっている。性的常習者が死刑になるのを恐れて、口封じのために子どもを現場で殺してしまうことが多くなるとの懸念だ。
米国は西側先進国の中では、死刑制度を温存している数少ない国だ。しかし、最近、死刑囚が、DNA鑑定技術が向上した結果、濡れ衣が晴れて釈放されるケースも目立っている。このためレイプ犯への死刑適用をめぐっても、慎重な対応を求める声が上がっている。
子どもへの性犯罪ではないが、ことし5月、サウスカロライナ州で女子大生が、アパートで、性犯罪の前歴を持つ35歳の男性に襲われ、殺害される事件が起きている。女子大生は、自分のビキニの水着で首を絞められ、殺された。
米メディアが大きく報道する中で、男は6月にテネシー州で逮捕された。2005年にフロリダ州の刑務所を出たばかりだった。性犯罪の経歴を持つ者への不安と反発を一段とかきたてる事件になっている。
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