2006年06月24日06時34分掲載  無料記事
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「ここはアメリカ、英語を話して」 反スペイン語感情強まる

 人種のるつぼといわれ、様々な言語が飛び交うのが米国の特徴だったが、最近はすっかり保守的な傾向を強め、英語しか認めないとする強硬派が数を増している。特に米国が抱える最大の課題である不法移民の多くが、スペイン語を話すヒスパニック(中南米系)のため、スペイン語を白眼視した動きも目立っている。米西部のユタ州では、開設されたばかりのスペイン語版の州政府の公式ホームページが、州民の反発で開始後2週間足らずで中止された。また米南東部のフィラデルフィア州では、サンドイッチ店が、注文は「英語のみ」と、差別的な方針を打ち出している。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 モルモン教の本部があることで知られるユタ州では、州政府のウェブサイトを衣替えし、スペイン語のサイトも開設した。ところがその直後から、英語が州の正式の言語だとして、市民から電話や電子メールで「けしからん」という苦情が殺到。これに驚いた州当局では、直ちにスペイン語版のページを閉鎖した。 
 
 英語版もスペイン語版も、市民に様々な手続き上の問題や、健康、それに納税の問題について情報を提供するもので、政治的な主張を展開する場ではない。 
 
 しかし、ユタ州では、2000年の州法で英語を公式の言語として使用すると規定している。スペイン語の使用に反発する州民は、この法律を根拠に州に圧力をかけ、州政府もそれに屈した格好だ。 
 
 ユタ州は、近年メキシコなどからの移民が急増しており、州民の間で不安感、危機感が広がっている。こうした背景も今回の動きの一因のようだ。5月には、メキシコのフォックス大統領が、ユタ州を訪問し、メキシコとの友好関係が強調されたばかりだけに、極めて皮肉な形になっている。 
 
▼閉鎖されるスペイン語サイト 
 
 ヒスパニックの支援組織によると、スペイン語のウエブサイトでは、自動車免許証の手続きなどの情報が入手できたという。今回の閉鎖については、州政府が強硬派の意見に屈したとして憂慮の念を表明している。 
 
 米国はこれまで英語とスペイン語が並存する形で社会が発展してきた。勿論、英語を話すのが最優先で、英語が話せなければ、米国社会で大きな社会的な地位に登りつめるのは困難とされる。しかし、メキシコやキューバなどから流入したヒスパニックは、母語であるスペイン語を捨て去ることはなかった。自国文化への限りない愛着が背景にあるといえる。 
 
 こうしたヒスパニックの態度に米国の保守層は長年、ヒスパニックは、米国文化への同化を拒否していると批判。最近の移民法改正の審議でも、英語を話せないヒスパニックが多数存在していることを問題視している。 
 
 一方、フォラデルフィア州にある有名なサンドイッチ店「ジノのステーキ」では、カウンターの上に、「ここはアメリカ。注文する時は、英語でお願いします」との表示を掲げた。 
 
 最近、米メディアが報道したため、大きな反響を呼んだ。行政当局でも差別につながると対応を検討中だ。イタリア系の移民である店主のジョセフ・ベントさん(66)の発案で、6カ月前から掲げているが、最近の報道で一躍騒ぎになった。 
 
 米国に住む以上、英語を話すべきだというのが、ベントさんの主張だ。法律関係者によると、客に英語で注文を求めるのは、必ずしも違法ではないと指摘。むしろ、店が、客の人種によってサービスで異なるようなことをすれば、問題になると述べている。店側では、客によって扱いで差別するようなことはしていないと話している。 


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