2006年06月29日12時46分掲載
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レイプ殺人の嫌疑晴れ、法律家に 獄中12年の経験も
担当取調官の脅迫じみた取り調べに屈し、犯してもいないレイプ殺人を自白したために、長期服役した男性がいる。服役中に真犯人が名乗りを上げたために、釈放されたが、改めて警察の自白強要の怖さを浮き彫りにした。この男性は、出所後ロー・スクール(法科大学院)に進学した。ことし5月に晴れて卒業し、米メディアもユニークな経歴を持つ彼の姿を紹介した。(ベリタ通信=苅田保)
この男性は、クリストファー・オチョアさん(39)。事件当時はまだ22歳だった。
18年前の1988年10月、米テキサス州オースチンのピザレストランで、マネジャーのナンシー・デプリーストさん(当時20歳)が、裸姿で床に倒れ,死亡していた。両腕は縛られ、レイプされた後、銃で頭を撃ち抜かれていた。
事件後、このピザレストランとは別の系列店で働いていたオチョアさんが19歳の同僚の男性と一緒に、殺害現場となったレストランを訪れ、デプリートさんを追想する目的で、ビールで乾杯の仕草をした。
この様子を目撃していた従業員が、二人の行動を不審に思い、間もなく二人は数日後に警察に逮捕された。
2日間に及ぶ取り調べで、オチョアさんに対する尋問時間は20時間以上に達した。担当刑事らは自白しないなら、死刑になるぞとオチョアさんを脅したという。
取調官は椅子を投げるなどの威圧的な行動も取った。弁護士を呼んでほしいと懇願しても、起訴されるまでは無理だと、うそを言われた。
またある刑事は、死刑囚房の写真や、デプリーストさんの遺体解剖の写真をみせて自白を強要した。こうした心理的な圧力で、オチョアさんは次第に不安な感情に陥り、うその自白をしてしまった。これに対し、19歳の同僚は、終始無罪を主張した。
裁判では、二人には終身刑が宣告され、服役生活が始まった。ところが、2000年に、テキサス州の刑務所で服役していたアキム・マリノが殺害を自供。マリノは獄中でキリスト教を学んでいくうちに、罪を告白するようになった。
これはマスコミにも報道され、この事実を知ったウィスコンシン州の大学院の教官や学生で組織する支援組織「イノセント・プロジェクト」が立ち上がり、DNA鑑定を行った結果、マリノが犯人であることが確実になった。
2001年、オチョアさんら2人は12年間の服役後、釈放された。オチョアさんは、出所後、獄中時代に始めていた大学の勉強を続けた。大学院に進学した頃は、金銭的に学資が出せるか不安もあったが、市当局が、賠償請求訴訟の和解に応じ、03年にオチョアさんは530万ドルの賠償金を受け取っている。
マスコミが、オチョアさんらは無実かもしれないと報道した際には、殺害されたデプリーストさんの母親ジャネット・ポップさん(56)は、娘を殺した者が無実になるのかと怒りで体が震えたという。
しかし、「イノセント・プロジェクト」に連絡を取り、証拠書類を読み、その結果警察が間違っていたことを知った。
オチョアさんを取り調べた主任捜査官は、二人が釈放された後、早期退職している。しかし、捜査官に対する責任追及は行われていないという。
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