2006年07月03日16時50分掲載  無料記事
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警官3人の首を切り落とす 治安悪化する一方のメキシコ  麻薬組織の犯行か

  貧富の差が激しく、政治や警察組織に賄賂や不正がはびこっているといわれる中米メキシコ。治安も安定せず、都市では身代金目的の誘拐や、麻薬密売に絡んだ暴力抗争事件が続いている。特に麻薬密売のお得意先である米国への販売ルートは、金の成る木であり、甘い蜜を求めて麻薬カルテルが勢力争いを繰り広げている。最近、米国境に近いメキシコの都市で、警察官3人が、麻薬組織とみられる武装集団に誘拐され、首を切断され殺害されるなど、治安は悪化する一方だ。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 6月21日夜、メキシコのバハカリフォルニア州ティフアナに近いロサリトで警官3人が誘拐された。 
 
 誘拐の経緯は次の通りだ。同日、警察に電話があり、武装した男たち約70人が、40台の車を連ねてロサリトを徘徊しているとの情報が寄せられた。3人の警官が現場に急行したが、3人は武装した男たちに車を取り囲まれ、誘拐された。 
 
 翌日、首のない3人の死体が空き地で発見された。同日午後、首はティフアナ川で見つかった。 
 
 目撃者の話では、武装した男たちは、覆面をかぶり、メキシコの連邦捜査員に酷似した制服を着用していたという。ティフアナは、米カリフォルニア州に通じる麻薬ルートだ。 
 
 メキシコでは現在、米国への麻薬密売をめぐり、麻薬カルテルが勢力争いを演じている。米テキサス南部に近い、メキシコ領のヌエボラレドでは、二大麻薬組織「シナロア」と「ガルフ」が流血の抗争を展開。過去1年6カ月の間に、230人以上が殺害されている。 
 
 麻薬組織は、殺し屋集団として、警察や軍出身の者をリクルートしている。彼らは戦闘出動用の制服に身を固め、文字通りコマンド部隊として、敵対者の殺人を請け負っている。 
 
▼勢力伸ばす「ガルフ」 
 
 メキシコ太平洋岸の保養地アカプルコでも、二大組織が抗争を繰り広げており、治安が悪化している。4月にはアカプルコの警察幹部が殺害され、首が発見されている。 
 
 首を切り落とすという行為は、極めて残忍な行為で、警察のみならず、敵対する組織に対しても、威嚇の効果があるとされる。 
 
 一連の警官殺害の理由は明確にされていないが、サンディエゴ州立大学のジェフリー・マッキワイン教授は、「麻薬組織は警察の摘発によって、密売の影響を受けている。麻薬カルテルが、対抗策を講じるのはむしろ当然」と話している。 
 
 ティフアナは、これまで「アレリャノ・フェリックス・ファミリー」の縄張りだったが、幹部の殺害・逮捕で組織が弱体化している。この空白を縫って「ガルフ」などが勢力を伸ばしている。 
 
 これに歩調を合わせて治安も悪化。5月には、AK47を持った3人組が、連邦司法長官事務所を襲撃。2人に発砲し、一人が死亡している。昨年10月には、殺人担当の幹部が、50発以上の銃弾を車に撃ち込まれ、からくも難を逃れている。 
 
 一方、連邦捜査局(FBI)は最近、投獄中の「ガルフ」指導者オシエル・ギレンに代わって組織を動かしているエルコス・サンチェスに対し、500万ドル(約5億7000万円)の懸賞金をかけた。 


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