2006年07月12日05時39分掲載
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米フッシュ政権の元長官候補だった警官トップ、収賄で逮捕
下積み警官から大都市ニューヨーク警察のトップまでに登りつめたものの、最後は、業者から“賄賂”を受け取っていた疑いで逮捕されたバーナード・ケリク元NY市警本部長(50)。まさに天国から地獄に落とされたようなものだが、2001年の9・11米同時多発テロの際、当時のジュリアーニ市長(62)とともに、NYの復旧や治安回復に多大な尽力をした功績からか、有罪にはなったものの、結局は刑務所行きは免れた。ケリク元本部長は、かつてブッシュ大統領から国土安全保障省の長官に指名されたこともあるが、様々な疑惑に包まれ、すぐに指名辞退に追い込まれていた。(ベリタ通信=苅田保)
米メディアによると、元本部長は、2件の罪に問われた。一つは、ブルックリンにある自宅のアパートの改造費16万5000ドル(約1900万円)を民間業者に払わせた。この業者は、市当局と契約受注を狙っていたとされ、また組織暴力団との関係も指摘されている。
二つ目は、このアパートを購入する頭金として、友人の不動産業者から2万8000ドル(約320万円)を借りたものの、これを当局に届けていなかった。NY市警本部長になる前の市矯正局長時代の1990年代に起きたとされる。
賄賂に近い内容にみえるが、起訴陪審は、「重罪」ではなく「軽罪」で訴追した。「軽罪」とは、少額窃盗や、他人の敷地への無断立ち入り、買春などを犯した罪などを指し、刑期も最高で1年以下とされる。
6月末にNYのマンハッタンの裁判所で開かれた審問で、元本部長は、二つの罪について有罪を認めたため、司法取引が成立した。司法取引は、時間のかかる本裁判を開かないで、審理を打ち切る制度。マンハッタンの裁判所は、この有罪認定を受け、本部長に対し、罰金22万1000ドルの支払いを命じた。この結果、刑務所行きは避けられた。
約10分間の審問で法廷の外に出てきた元本部長から謝罪の声は聞かれなかった。黒のBMWに乗り込み、去っていった。現在中東のヨルダンを拠点に警備のコンサルタント会社を経営しているという。
▼異色の経歴の持ち主
元本部長は異色の経歴の持ち主。子どもの頃、両親が離婚。母親はアルコール中毒で、元本部長が4歳のときに殺害されたという。特に学歴もなく、軍隊では憲兵を務めた。一時サウジアラビアで、王室関係者の警備の仕事もした。その後ニューヨーク市警の警官になり、麻薬摘発で名を馳せた。
ジュリアーニ氏が、90年代にNY市長に立候補した際、運転手兼護衛役を務め、親しい関係になった。ジュリアーニ氏が市長当時の2000年8月、NY市警本部長に就任した。
9・11後は、ジュリアーニ氏とともに全米に名を知られるようになった。ブッシュ大統領は、この実績から国土安全保障省の長官に指名したが、間もなく、不法移民を家政婦などとして雇っていた事実が表面化し、指名を辞退している。
この当時、マスコミは、元本部長の金銭、女性関係のスキャンダルを暴いていた。今回の逮捕に際し、元本部長は、写真や指紋も取られる屈辱感を味わったという。
一方、6月末の有罪認定の直後、NYのブルームバーグ現市長は、「バーナード・ケリク」と元本部長の名前が冠されたマンハッタンにある矯正施設の名称を直ちに変更し、元の名称に戻している。
2001年12月に当時のジュリアーニ市長が、9・11の後奮闘した元本部長の功績を称えて、矯正施設に彼の名前を冠していた。ジュリアーニ氏は、有罪認定によっても、彼の市警本部長としての功績に影響はないと述べている。
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