2006年07月13日13時30分掲載  無料記事
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イラクでのレイプ殺人は「人格障害」 元米兵士が法廷で争い

  最近、イラク駐留米軍兵士によるイラク民間人殺人事件が次々と明るみに出ているが、その中でも最悪といわれるのが、首都バグダッド南方のマハムディヤで起きた家族4人殺害事件。犠牲者の一人の少女はレイプされた上、殺害された。主犯は事件発覚前に除隊していた21歳の青年。除隊理由は、軍隊生活に対応できない「反社会性人格障害」と診断されたためだという。この症状は、激情的で罪悪感が薄く、また遵法精神に欠け、しばしばうそをつくという。青年は6日に米ケンタッキー州の裁判所で開かれた審問で、罪状を否認し、法廷で争う構えをみせた。(ベリタ通信=有馬洋行) 
 
  米メディアによると、米捜査当局は6月30日、第101空挺師団(ケンタッキー州)の下で、2005年9月から06年4月までイラクに従軍していた元一等兵スチーブン・グリーンを、レイプと殺人の疑いで逮捕した。 
 
  この事件はその手口の悪質さから大きな関心をもって報じられている。事件はことし3月12日に起きた。マハムディヤの民家に、グリーンや他の3人の兵士が押し入り、グリーンが、家の中にいた15歳の少女の父親(45)と母親(34)、それに5歳の幼女を寝室に連れ込み、射殺した。 
 
  その後で、少女をグリーンともう1人の兵士がレイプした後、グリーンは少女の頭に数発の銃弾を撃ちこみ、殺害。さらに遺体に火を放って逃亡した。その後、事件は抵抗勢力の仕業として処理されていた。 
 
  少女の年齢については、米側捜査資料では、25歳の成人女性ともいわれているが、米メディアは、現地からの報道を基に、15歳としている。 
 
  グリーンらは、この家から180メートル離れた交通検問所で任務に就いていたことから、少女の存在を知り、計画的にレイプを企てたという。当日は、黒いTシャツ姿で変装して侵入し、少女の家にあったAK47ライフル銃を使って殺害した。 
 
  イラクからの報道では、事件の3日前にも、米軍兵士らが、少女の家を理由もないのに捜索し、少女を襲撃する機会をうかがっていた。 
 
  事件から3カ月後に、グリーンらが所属していた部隊の兵士が、誘拐され、二人の兵士が首を切断された状態で発見された。これは、少女のレイプ殺人に対する報復ともみなされた。そうした中で、米軍兵士たちが6月に、レイプ殺害を告白し、事件が表面化した。 
 
▼仕掛け爆弾さく裂地帯 
 
  グリーンは事件発覚1カ月前の5月に「反社会性人格障害」と診断され、名誉の除隊になっていた。同障害は、ストレスに弱いとされ、激情しやすい性格という。時としてうつ病、精神分裂の症状もみられるとされる。 
 
  人格障害は、家族などが気付くケースが多いとされるが、グリーンは高校中退で、両親は4歳の時に離婚している。母親はその後再婚している。 
 
  グリーンらが任務に就いていた地域は、道路脇の仕掛け爆弾が頻繁に破裂する“死の三角地帯”と呼ばれる危険な場所だった。この地域をパトロールする兵士には、精神的な障害で治療を受ける兵士が多いという。 
 
  グリーンは除隊処分になっていたため、軍事法廷ではなく、一般の法廷で裁かれるが、有罪となれば、死刑となる可能性もある。今のところ、グリーン以外は誰も、この事件では罪に問われていない。 
 
  イラク政府も一連の事件に重大関心を寄せ、米軍兵士の蛮行に怒りの声を挙げているが、イラク駐留軍当局は、少数の兵士のために軍全体に批判の目が向けられるのは心外との立場を明らかにしている。 


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