2006年07月18日04時05分掲載
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世界最強の軍隊にネオナチが侵入 民間団体が米国防総省に警告
反差別を掲げる民間団体が、世界最強の軍事力を持つ米軍に、ドイツの独裁者ヒトラーを崇拝し白人優位を主張する若者が、多数入り込んでいると警鐘を鳴らしている。10年前に、極右組織ネオナチの信奉者と言われたティモシー・マクベイが、米オクラホマ州で米連邦政府ビルを爆破し、168人が死亡させたが、マクベイも米陸軍の出身だった。同団体は、こうした人種偏見に凝り固まった若者が、軍隊で最高の訓練を受け、さらに最新の武器の扱いを学ぶことの危険性を指摘。彼らが除隊後、その技術を悪用する恐れがあると警戒している。(ベリタ通信=江口惇)
イラク、アフガニスタン戦争を戦っている米軍は、新兵の募集に四苦八苦しているが、この影響で、新兵募集担当者が、入隊の審査基準を下げたため、白人優位を唱える過激組織ネオナチやスキンヘッドに加わっている若者が、軍内部に浸透する結果になっている。
これは、アラバマ州を本部とする民間の反差別を訴える「サザン・ポバティー・ロー・センター」(SPLC)が最新の報告で明らかにした。同団体は、現在の状況は極めて重大であり、速やかにこうした傾向を是正すべきだとして、ラムズフェルド国防長官に書簡を送り、対応を迫っている。
1995年4月、オクラホマシティーにある連邦政府ビル前で、爆弾を積んだトラックが爆発し、ビルは大破した。建物の中には、託児所もあり、子どもを含め、多数が死傷した。主犯は、ティモシー・マクベイで、第一次湾岸戦争にも参加し、陸軍では、優秀な兵士といわれていた人物だった。
陸軍のエリート部隊であるグリーン・ベレーに所属することができず、失意のまま除隊したマクベイは、軍内部で生活するうちに、次第に反政府の感情を抱くようになったといわれる。マクベイは、軍隊仲間の一人と共に、爆弾を製造するなど、軍で得た知識を悪用した。裁判で死刑になり、2001年6月処刑された。
SPLCの報告では、ネオナチなどに加わっている兵士は、現在数千人に達し、陸海軍や海兵隊などに広がっている。大半が過激な思想を表面に出さず、行動している。仲間同士では、暗号や、インターネット上で様々な連絡を取り合っている。
SPLCのリチャード・コーエン代表は、国防長官宛ての書簡の中で、軍隊内の極右兵士は、「明日のマクベイ」になると強く警告している。マクベイは、軍隊内で、連邦政府爆破テロの共犯者をリクルートしたといわれている。
▼イラク戦争で審査基準が緩む
このため当時のペリー国防長官は、軍内部から、極右思想を持つものを排除に乗り出した。しかし、その後イラク戦争の長期化で、若者の軍隊離れが進行し、審査基準が大幅に緩まり、過激思想の若者が、軍内部に広がる結果になっている。
これまでに実際にイラクに従軍した者もいる。バグダッドでは、白人優位国家を目指す落書きも見つかっている。しかし、軍当局は、内部調査の徹底に消極的で、極右信奉者らが、根を張る一因になっている。
また過激思想の若者に対し、組織の指導者らが、軍隊に入れば武器の扱いや、戦闘技術、爆弾製造などが学べるとして積極的に勧誘している傾向があるという。米軍兵士は、民主主義を守るのが使命とされるが、ネオナチ思想は、人種戦争による革命を夢想し、民主主義を否定している。
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