2006年07月19日19時45分掲載
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判決厳しすぎたと米判事が不思議な?後悔
飲酒運転でオートバイと衝突し、二人に死傷を負わせた女性が今春、禁固2年の実刑判決を受けた。女性は刑務所に服役したが、刑を宣告した判事が、なぜか刑は重すぎたと後悔し、大幅に刑を軽減する意向を明らかにした。これには、検察や被害者、その家族が強く反発したが、法律上は、判事が、量刑を差し替えるのは違法ではないという。予想としては、実刑が執行猶予刑に変更され、女性は刑務所から釈放される可能性が大きい。(ベリタ通信=苅田保)
米メディアによると、事故が起きたのは、2005年6月4日夜。米カリフォルニア州レイクエルシノーに住むシェリー・スミスさん(現在受刑者、42)が運転するトラックが、片側1車線の山岳道路オルテガハイウェーを走行中、中央車線を超え、対向してきたオートバイのハレーダビッドソンに衝突した。
この事故で、オートバイを運転していたケリー・スギラさん(52)が死亡。後部席に乗っていた妻シェリルさん(55)は左足を失う大怪我をし、病院に4カ月入院した。
スミスさん当日、同州テメキュラ市で開催されたワイン祭に参加した。その後、同市に近いレイクエルシノーの自宅に戻る途中だった。ワイン祭りでかなり飲酒をしていた。
オルテガハイウェーは、山道を抜けるカーブの多い道路で、かなり注意をして運転しないと、中央線をはみ出す危険性が高い。
スミスさんは罪を認め、ことし3月に禁固2年の実刑を受け、刑務所に服役した。
▼米では
ところがその3カ月後に、刑を言い渡したジェームズ・ウオーレン判事が、初犯で犯歴のない人間に厳しすぎる判決を言い渡したと後悔。6月に再び審問を開き、「私は間違いを犯した。彼女は保護観察(執行猶予)を受けることができる」と発言、検察や被害者らを驚かせた。
米国の法律では、量刑の差し替えは、時折行われるが、被告が入獄してから120日以内に行う必要があるという。量刑差し替えは、審問を再び開き行われるが、検察や弁護側でなく、判事自らが申し立てるのは珍しいという。
法律の専門家によると、交通事故で相手にけがを負わせなかった者で、かつ初犯者は、投獄されても6カ月程度で済む。しかし、飲酒の上に二人を死傷させているスミスさんに、禁固2年の量刑が厳しすぎるとは必ずしも言い難い。
この判事の姿勢に、左足を失い、車椅子の生活を余儀なくされているシェリルさんは、不満を隠さない。
シェリルさんは事故で人生の心の伴侶と思っていた男性を失った。スミスの無謀運転で不自由な体になった。しかし、スミスは、裁判長の心変わりで、何事もなかったかのように、出獄し、家族の下に帰ることができる。「これはフェアですか」とシェリルさんは問いかける。
シェリルさんは、事故の後、費用がかさみ、家を手放す羽目になった。経済的に苦境に陥っている。
シェリルさんの息子で、死亡したスギラさんは義父に当たるジェレミー・ポポフさん(34)は、判事の判断は、酒を飲み、人を殺しても、過去に犯罪歴がなければOKという、誤ったメッセージを世の中に送ることになると反発している。
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