2006年07月28日01時12分掲載
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NY州では判事の拳銃携帯がOK 危険がいっぱいの裁判所
裁判所の中にいた判事が、離婚訴訟を使っていた当事者から、高性能ライフルで狙撃されたり、被告人が法廷の中で、警備の保安官から銃を奪って発砲するなど、米国の裁判所を舞台に物騒な事件が相次いでいる。このほかにも判事の家族が、民事判決の恨みから殺害される事件も起きている。このため司法関係者の間からは、判事を守る護衛をつけるべきだとの声も上がっている。ニューヨーク州では最近、判事が黒の法服の下に、護衛のための拳銃を携帯して出廷するのが認められるなど、過剰とも思われる動きも出ている。(ベリタ通信=有馬洋行)
これまでに起きた主な事件を拾ってみると──。ことし7月に、ノースカロライナ州の法廷で、誘拐や殺人未遂で56年の禁固刑を受けていた被告が、別の殺人未遂事件の審理のため出廷中、大暴れした。
ウィリー・フォレスト被告(37)は、自分の弁護士の解任を判事に要求したが、判事はこれを却下。かっとした被告は、手錠、足かせをはめられていたが、警備の保安官から拳銃を奪い、発砲。これが保安官の腕に命中した。
さらに別の保安官とももみ合いになり、被告はさらに発砲した。このため3人目の保安官が被告に発砲、弾が腹部に命中し、被告は病院に運ばれる途中に死亡した。法廷内で発砲された銃弾は計6発だったという。
同被告は、以前にも誘拐事件で有罪が宣告された後、弁護士に殴りつけ、警備員が5人がかりでようやく取り押さえたことがあった。
この事件の少し前の6月には、ネバダ州リノの裁判所で、離婚訴訟を扱っていたチャック・ウェラー判事が、3階にある裁判所の窓際に座っていたところ、ライフル銃一発が撃ちこまれた。弾は判事の胸に命中したが、幸い一命を取りとめた。
犯人は、古物商経営のダーレン・マック(45)で、当日、判事を狙撃する前に、離婚話でもめていた妻を射殺していた。マックは、裁判所の建物から約270メートル離れた駐車場もしくは建物から判事を狙撃したとみられている。マックは犯行後、メキシコに逃亡したが、間なく捜査当局に自ら出頭した。
このほかにも、2005年3月には、ジョージア州アトランタでは、レイプ事件の被告が、保安官の銃を奪い、判事、保安官ら3人を射殺、逃亡する事件も起きている。被告はその後逮捕された。同年2月には、シカゴで、女性連邦判事の夫ら二人が、自宅で殺害された。犯人は、同判事が担当した民事事件の当事者。判決を根に殺害したもので、犯人はその後自殺している。
こうした凶悪事件が続く中で、ニューヨーク州では、判事の一人が先に、州司法倫理諮問委員会(判事が担当)に、法廷内に拳銃を持ち込むことはOKかどうかを打診していた。同委員会は7月に、判事が拳銃を隠し持って審理を行うことは、問題なしとの判断を下した。
米国では武器の携帯は、憲法上許されているが、判事が拳銃を法服の下に持ち込んで審理する場合には、裁判の公正さに影響がないようにする義務があるという。またネバダ州のライフル銃撃事件を受け、裁判所の建物の窓を防弾ガラスにすべきだとの声も上がっている。
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