2006年08月11日15時16分掲載  無料記事
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中南米系ギャングをヘイトクライムで断罪 黒人層の「浄化」狙う

  米カリフォルニア州ロサンゼルス北東のハイランドパークで、アフリカ系米国人(黒人)への憎悪から、殺人や嫌がらせなどの人種差別的犯罪を繰り返していた中南米(ラテン)系の若者4人に対し最近、「ヘイト・クライム(憎悪犯罪)」で有罪の評決が下った。ヘイト・クライムは、他民族・他人種への嫌悪などに基づくもので、連邦犯罪として扱われる。これまで黒人を攻撃する極右の白人至上主義の団体などが有罪になってきた。今回のように中南米系の街のギャング仲間がヘイト・クライムで有罪になったのは初めてという。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 この事件をめぐっては、首都ワシントンの司法省から人権問題担当の幹部が現地に派遣されて検察陣に加わるなど、連邦政府も力を入れていた。米メディアによると、同州の連邦裁判所で有罪評決を受けたのは、ハイランドパークで1995年から2001年にかけ、“黒人浄化”を行っていたギルベルト・サルダナ被告(27)ら4人。残る2被告は逃亡中という。 
 
 ことし後半に量刑判決が言い渡されるが、仮釈放が認められない終身刑が宣告される見通しだ。 
 
▼黒人とラテン系とが勢力争い 
 
 米国の各都市では、黒人のギャング団とラテン系の組織が、しばしば勢力争いで、衝突している。しかし、サルダナ被告らは、ギャング組織とは無縁の一般黒人住民を標的に、追い出しの脅迫行為や殺人を重ねてきた。同被告らが根を張る一帯は、ラテン系住民が多く住む場所だった。 
 
 被告らは1999年4月、バンに乗って市内を徘徊していた。その時、偶然、黒人の乗ったキャデラックが、自分たちの勢力圏に駐車しようとしているのを見つけた。仲間の一人が、誰か黒人を殺したい者がいるかと質した。するとバンの中にいた3人が飛び下り、ケネス・ウィルソンさん(38)の車まで駆け寄り、銃を乱射した。車には多数の銃弾が撃ち込まれた。 
 
 2000年11月には、黒人のミュージック・プロデューサー、アンソニー・プルドムさん(21)のアパートを急襲し、ふとんの上にいたプルドムさんの頭に銃を撃ち込み、殺害した。翌12月には、被告らから暴力を振るわれ、警察に被害を報告していた黒人のクリストファー・バウザーさん(28)が、バス停で射殺された。 
 
 息子のプルドムさんを失った母親ルイザさんは、米メディアに対し、「真実が明らかになった」と評決を評価した。しかし、「これはギャングが行う通常の行為ではない。これはヘイト・クライムだ」と指摘し、憎しみや人種差別、無知に根ざした無軌道な若者の犯行を批判した。 
 
 ハイランドパークの周辺に住む黒人層は、今回の評決で、街が平和に暮らせる場所になることを期待している。しかし、人種に基づ事件が、今後も引き続き起きる可能性は依然残っているという。 
 
 事実、ハイランドパークでは7月22日、高校生が多数参加したパーティーで、黒人のギャング・メンバーが黒人の高校生らと、口げんかをした。黒人の高校生が、パーティーから帰ろうとすると、再び口論になり、ギャングの一人が銃を抜き、発砲した。このため傍にいた17歳の高校生が死亡している。 


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