2006年08月11日15時25分掲載
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中東
イラク駐留米軍の虐殺、次々と明るみに 友軍兵士が「しゃべれば殺す」と脅迫 加速する暴力志向
対イラク戦争の負の側面といえるのが、駐留米軍兵士によるイラク市民らへの非合法な殺害だ。最近、こうした事件が相次いで発覚し、米軍の威信が揺らいでいる。幾つかの事件は、軍当局が調査しているが、8月初めにイラクの軍事基地で行なわれた審問で、証人の米軍兵士が、駐留部隊の中には、イラク人への蔑視や差別感を助長する土壌があることを明らかにし、波紋を広げている。(ベリタ通信=江口惇)
米メディアによると、イラク中部のサマラで起きた米軍兵士らによるイラク人3人殺害をめぐり、最近事件を目撃した兵士らが、予備審問の中で、所属していた旅団司令部にはびこる暴力的傾向について証言した。この事件では4人の兵士が罪に問われている。
サマラの事件は2006年5月に起きた。サマラは、首都バグダッド北方約100キロの所にある。第101空挺師団第3旅団所属の兵士が、抵抗勢力殲滅の軍事作戦を実施した。第3旅団の指揮官はマイケル・スティール大佐で、指揮官としては、軽率な点があるともいわれている。
2日に証言した第三旅団のブラッドレー・メイソン上等兵は、作戦当日、大佐ら指揮官が、兵士に対し、「交戦するすべての男性の兵士を殺害せよ」と命令を出したと述べた。
兵士らは夜明けと共に、軍用ヘリで湖に浮かぶ島に上陸作戦を敢行。しかし、予期されたような相手からの反撃はなかった。メイソン上等兵は、ある民家の前で、窓際に老人が立っているのを目撃し、銃を乱射。老人は死亡した。
家の中には他に3人の男性がいた。他の兵士らが、怯えている3人にプラスッチク製の手錠をかけ拘束、家の中を捜索した結果、AK47ライフル銃と、弾薬を発見した。イラクでは、AK47の所有は合法のため、結果的に怪しい点はなかった。
▼殺人を正当防衛に擬装
しかし、レイモンド・ギルアード二等軍曹らが他の兵士と、3人の収容者を殺害することを企てた。メイソン上等兵は「これは殺人だ」と抗議したが、無駄だった。
“処刑”は外で行われた。家の中にいたメイソン上等兵の耳に、機関銃の音が響いた。この事件は旅団本部には、抵抗勢力が降伏を拒否したための正当防衛と報告された。これを偽装するため、殺害を実行した兵士は、仲間に自分の顔を殴らせたり、自らナイフで腕を切り、抵抗された“証拠”を捏造していた。
メイソン上等兵は、その後、殺害を実行した兵士から、しゃべれば殺すと脅迫された。米国防総省では、この事件について、メイソン上等兵らの問題提起後も、旅団本部に問題解決に当たる姿勢がなかったと指摘している。
▼「敵」殺すと褒美にナイフ
兵士らの証言によると、旅団司令部は、暴力を助長する傾向があったという。事務所の掲示板には抵抗勢力を何人殺したかの記録があり、また「敵」を殺害した者には、褒美としてナイフが贈られた。
また米軍兵士の間では、民間のイラク人を、見下した意味をあえて込めて、「ハッジイ」(メッカ巡礼を終えたイスラム教徒)と呼び、また米軍の協力するイラク兵たちを「テロリスト」と呼んでいた。証言した兵士たちは、訴追を受けないとの条件で出廷した。
4人の兵士は、軍法会議で有罪になれば、死刑になる可能性もある。軍当局の現在の関心は、旅団内にみられる暴力志向の傾向を築いたスティール大佐への責任追及問題だ。「すべての男性兵士を殺害せよ」という違法な命令を本当に出したかどうかが、大きな決め手になるという。
大佐は既に譴責処分を受け、軍人としてのキャリアは終わった形になっている。しかし、4人の部下が起こした事件については、発言が自己に不利になることを恐れて、審問で証言することを拒否している。
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