2006年08月12日02時02分掲載  無料記事
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米大統領は環境保護では落第? 米国民に地球温暖化への懸念深まる

 記録的な熱波に覆われた米国では、西海岸のカリフォルニア州や東部のニューヨークなどで死者が相次いだ。焼け付くような日差しを前に、この暑さは地球温暖化に関係しているのではとの議論が再び噴出している。しかし、地球温暖化への取り組みが消極的といわれるブッシュ大統領は、依然「温室効果ガス」が地球温暖化の原因だとは認めていない。イラク戦争などの外交政策ばかりか、環境問題でも世界の認識とずれが生じているわけだが、こうしたブッシュ大統領の姿勢にもかかわらず、米国民の間では、地球温暖化を懸念する層が増えているという。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 米ロサンゼルス・タイムズとブルームバーグの最新の合同世論調査によると、回答者の56%が、ブッシュ大統領による環境保護対策が十分でないと考えている。この層は、5年前に比べ15ポイント上昇している。ブッシュ大統領は、対イラク戦争の運営をめぐっても、支持が大幅に減っているが、環境問題でも、国民から辛い採点を突きつけられた格好だ。 
 
 ブッシュ大統領は、大統領選挙前までは、地球温暖化に取り組む姿勢をみせていたが、当選1期目の2001年には、温室効果ガスの排出量の規制を目指した京都議定書から一方的に離脱。このため米国の環境保護関係者からは、「環境保護で最悪の大統領」と呼ばれている。 
 
 温室効果ガスとは、自動車の排ガスなどによって大気中の二酸化炭素などが増加し、地球温暖化の原因とされる。大型ハリケーンの発生など異常気象を引き起すともいわれている。 
 
 米国では昨年夏、南部が超大型ハリケーン「カトリーナ」に襲われ、ニューオリンズ市が堤防の決壊で水浸しになった。市は、いまだに完全には復興していない。「カトリーナ」被害は、米国民に地球温暖化が差し迫った脅威になっていることを深く刻み込んだ。 
 
 最近の異常熱波で、カリフォルニア州では140人の死者が出た。こうした中で、ブッシュ大統領の強力な支持者で、地球温暖化を疑問視していたTV伝道師パット・ロバートソン氏(76)が最近、地球温暖化を容認する姿勢に転換した。米マスコミは、「ブッシュ氏への造反」と書き立てた。 
 
 しかし、連邦議会で多数を握る与党共和党は依然、ブッシュ大統領と同様、大勢として地球温暖化には懐疑的だ。 
 
 下院議員で共和党副院内総務のロイ・ブラント氏は最近、ことし11月の連邦議会選挙で再選された後も、地球温暖化問題にはなんら手を打たないと豪語した。その理由は、地球温暖化に関しては疑問点が多く、何ら対策を打ち出す必要がないというものだ。 
 
 地球温暖反対派は、地球温暖化は、地球の周期的な温度変化によるもので、人為的なものでないとの立場に傾いている。 
 
 またブッシュ支持の保守派メディアは、2000年の民主党大統領候補だったゴア氏が、自らが出演するドキュメンタリー映画で地球温暖化を警告していることに触れ、ゴア氏の主張は「正常ではない」「頭がおかしい」などと批判している。 
 
 こうしたブッシュ大統領や共和党議員の消極的な姿勢とは裏腹に、カリフォルニア州のシュワルツネッガー知事とブレア英首相が7月に、州と国のレベルで排出ガス規制で協力することで合意した。ブレア首相は、米国の対テロ戦争では、ブッシュ大統領の言いなりと批判されているが、地球温暖化では明確に意見を異にしている。 
 
 クリントン前大統領も地球温暖化に懸念を示し、独自の環境イニシアチブを提案している。 


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