2006年08月15日15時04分掲載
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時事英語一口メモ
【5】イスラエルの戦争のキーワード
ブログ版
各国の指導者や国際機関が、ヒズボラとハマスの越境攻撃に対するイスラエルの報復攻撃について非難する際に使った言葉がある。日本語の記事では、この言葉の重要性はほとんど目立たなかったが、英語の記事やコラムでは見出しに使われた。この言葉こそが今回の戦争のキーワードである。その言葉は、次ぎのように使われている。(鳥居英晴)
“While Hezbollah's actions are deplorable, and as I've said Israel has a right to defend itself, the excessive use of force is to be condemned….Both the deliberate targeting by Hezbollah of Israeli population centers with hundreds of indiscriminate weapons and Israel's disproportionate use of force and collective punishment of the Lebanese people must stop.” (コフィ・アナン国連事務総長)
"The European Union is greatly concerned about the disproportionate use of force by Israel in Lebanon in response to attacks by Hezbollah on Israel.”( 欧州連合議長国のフィンランドの声明)
”We are gravely concerned over the deteriorating situation and the escalation of violence in the Middle East, particulary the disproportionate, indiscriminate and excessive use of force by Israel in the Ocuppied Palestinian Territory and in Lebanon.” (東南アジア諸国連合外相会議の特別声明)
それはdisproportionateという言葉である。ニューヨーク・タイムズ紙でLanguageというコラムを担当しているウィリアム・サファイアーは、こう述べている。
「…it is evident that the current meaning of disproportionate in this legal/diplomatic context is not "asymmetrical, unbalanced," which aims to state an objective fact, but is "excessive, uncalled for," which makes a subjective judgment.」(この法的・外交上の文脈におけるdisproportionateの現在の意味は、客観的事実を述べるための「非対称な」「不均衡な」ではなく、主観的判断をする「行き過ぎた」「不必要な」であることは明らかである)
この言葉はproportionality(釣り合い)から派生した形容詞。サファイヤーによるとproportionalityという概念は、1907年のハーグ陸戦条約に由来するという。
ノートルダム法科大学院のマリー・エレン・オコンネ教授によれば、国際法はjus ad bellum(戦争をする権利、武力行使の合法性に関わる法)と jus in bello(戦争における 正義、武力紛争で適用される法)を規定しており、どちらもproportionalityの原則が適用されなければならない。
proportionalityの定義として、ジュネーブ条約(1949年)の1977年追加議定書51条5−bが無差別なものと認められる攻撃を次ぎのように規定している。
Such an attack is one “which may be expected to cause incidental loss of civilian life, injury to civilians, damage to civilian objects, or a combination thereof, which would be excessive in relation to the concrete and direct military advantage anticipated.”「予測される具体的かつ直接的な軍事的利益との比較において、巻き添えによる文民の死亡、文民の損傷、民生物の損傷またはこれに複合した事態を過度に引き起こすことが予測される攻撃」(外務省訳)
しかし、専門家によると、proportionalityの原則は解釈に余地があり、状況次第という。タフツ大学フレッチャー大学院の国際法のマイケル・グレノン教授は、レバノンの政治における少数派であるヒズボラの侵入について、レバノン政府は責任があるという立場をとる。
一方、オコンネは、ヒズボラは主権国家ではなく、レバノンに責任はなく、仮に責任があったとしても、ヒズボラの攻撃は自衛権を発動させるようなものではなく、“incidents”とみなされる低レベルの行為であるとする。
“By deciding to use force of an extensive nature, including sending troops into Lebanon, Israel acted disproportionately.”(レバノンに兵を送るなど大規模な武力行使をするという決定をして、イスラエルは行き過ぎた行動をした)
そして彼女は次ぎのように述べている。
“Augustine taught that war should always be conducted with an eye on the peace. ...What mattered for Lincoln was that the war would end and that the belligerents would be able to live together in peace. Treating the enemy proportionately, in accord with ancient principle, helped achieve that goal.”(アウグスティヌスは、戦争は常に平和と念頭において遂行されなければならないと教えた。・・・リンカーンにとって問題だったのは、戦争が終わったあと戦闘員が平和に一緒に暮らせることであった。古代の原則に沿って、敵をproportionatelyに取り扱うことは、その目標を達成するのに役立った)
参考サイト
http://www.chron.com/disp/story.mpl/editorial/outlook/4112311.html
http://jurist.law.pitt.edu/forumy/2006/07/proportionality-and-use-of-force-in.php
http://www.cfr.org/publication/11115/israel_and_the_doctrine_of_proportionality.html
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