2006年08月17日14時11分掲載
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自転車優勝者、大歓迎のはずがドーピングで暗転 地元ムリエタに失望感
米カリフォルニア州のロサンゼルスとサンディエゴのほぼ中間点にある地方都市ムリエタ(人口約9万2000人)が、思わぬことで一躍世界の注目を集めている。自転車ロードレースのツール・ド・フランスで総合優勝したフロイド・ランディス氏(30)が、ムリエタに住居を構えているからだ。しかし、地元が熱烈な歓迎を準備していた矢先、大会中のドーピング(薬物使用)が発覚。二度目の検査でも陽性反応が出て、地元関係者はどうしたものかと思案げだ。(ベリタ通信=有馬洋行)
ランディス氏がサンディエゴからムリエタに移り住んだのは5年前。サンディエゴから車で約1時間かかるムリエタに移転したのは、当時、ムリエタは、まだ中都市のサンディエゴに比べ、住宅価格が割安なためだった。プロ選手のランディス氏にとって、手頃な予算で家が購入できる利点のほか、ムリエタの起伏の多い丘陵地帯が、自転車のトレーニングに向いていたと考えたようだ。
しかし、ツール・ド・フランスで優勝するまで、同氏の存在は、一部の自転車愛好家以外は、あまり知られていなかった。
自宅は、ムリエタの中心地から車で10分程度の新興住宅地のクリントン・キースにある。周辺の住宅は現在の価格で購入すれば、40万ドル(約4600万円)以上はする。米国の中流層が買える価格で、全米不動産市場の中でも、庶民とにとっては、決して安い価格ではない。
ランディス氏は、一時、優勝が絶望視されたが、山岳コースの最終ステージで盛り返し、7月23日に総合優勝を果たした。米国人の優勝は、昨年前人未到の7連覇を達成して引退したランス・アームストロング氏に続く3人目となった。
最終日には、ランディス氏の関係者やファン約40人が、地元歯医者の会議室に集まり、同氏が優勝を決めると、こぶしを突き上げ、歓声が響き渡った。
ランディス氏が、地元で自転車のタイヤなどパーツの交換で、しばしば利用していた販売店「IEバイク」の店員は、「普通の感じの人だったが、大変なことをした」と大喜びした。
ムリエタ周辺では、近年ロードレースが人気を集めており、ランディス氏の優勝で、自転車への人気が一段と大きくなると期待した。市でも早速祝賀行事の準備に入った。
ところが、数日後、ドーピング(薬物使用)検査で筋肉増強剤のテストステロンが発覚。再検査でも薬物使用が明らかになり、地元に「やはりだめか」のあきらめムードが広がった。
市では、再検査では、再び陽性反応が出たことに失望感を隠せない。一方、自宅のあるゲートの鉄扉には、「お帰りなさい」の垂れ幕がかけられたままだ。現在、自宅の写真を撮ろうと、柵を越えてカメラマンが侵入したとの目撃情報が警察に寄せられたため、警官が周辺を警戒する事態になっている。
米国人の好む「英雄」から、一転薬物使用者の疑いが一層濃くなったが、ランディス氏は自分のウェブサイトで、薬物使用の事実を依然拒否している。
ドーピング違反で、大会優勝者が失格になるのは、前代未聞の不祥事。失格になれば、2年間の出場資格処分も受ける。法的に処分を争うことも可能だが、検査結果がひっくり返る可能性は低いという。
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