2006年08月23日02時53分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200608230253493
携帯電話大量購入で米警察が男2人を逮捕 テロリストと勘違い?1週間後に釈放
8月初旬に米オハイオ州で、ミシガン州出身の二人の若者が、テロ容疑で逮捕された。二人は車の中に多数の携帯電話をのせていた。携帯電話は爆弾テロの起爆装置に使われると警戒されている。テロ事件捜査に不慣れな地元警察がテロ容疑者を発見し逮捕するのはあまり例がなく、大きなお手柄になるはずだった。当時逮捕のニュースは速報の形で全米に流された。ところが、逮捕は捜査当局に勇み足だった可能性が大きくなっている。なぜなら二人が「テロ事件と無関係」として逮捕から1週間で釈放されたからだ。(ベリタ通信=苅田保)
米メディアによると、釈放されたのは、アリ・ホウサイキさん(20)とオサマ・アブラッサン(20)。二人は中東系でイスラム教徒。共にミシガン州の小さな町に住んでいる若者で、地元ではアメリカン・フットボールやバスケットボールのうまいスポーツマンとして知られている。
二人は8月8日、オハイオ州で交通違反を起こし、警官に停車を命じられた。職務質問の間に、車の中からプリペイド(料金前払い)の携帯電話12個と、現金1万1000ドルが見つかった。また中東のヨルダン航空に関する書類も見つかった。
同州では4月に州の反テロ法を制定しており、捜査当局は二人をテロ容疑で逮捕、起訴した。二人は留置場に収容された。その後の調べに対し、二人はこれまでに600個の携帯電話を購入したと話している。
しかし、この逮捕劇は、米連邦捜査局(FBI)とあまり緊密な連絡の上で行われたものではなかったようだ。FBIはテロ捜査のプロだが、オハイオ州は、テロ捜査では実績はほとんどなく、かなりの思い込みがあったようだ。
実は、ワシントンの連邦政府は、ことし初め、地方の警察に対し、大量の携帯電話を購入する者は、テロリストの疑いがあるので警戒するようにと通達を出していた。携帯電話の大量所持が即、テロリストとの等式が生まれる環境があったといえる。
二人は、プリペイドの携帯電話を購入し、それを転売して利益を上げようとしたいただけだった。決まった金額の時間枠しか離せないプリペイドの携帯電話は、電話会社との契約を必要とせずに、すぐに通話ができるのが特徴。このため身元を明かしたがらない麻薬業者などに人気があるという。
▼イスラム教徒への嫌悪を反映
FBIはオハイオ州の思い込みを懸念してか、異例の発表を行い、二人の若者はテロ事件とは無関係であることを明らかにした。このためオハイオ州検察も8月15日、起訴の取り下げを決めた。車の中から見つかったヨルダン航空の書類は、二人のうちの1人の母親のものという。母親は同航空に勤めている。
二人の支援者らは、今回の逮捕の背景には、イスラム教徒を嫌悪する今日の米国社会を反映したものと批判している。
一方、ミシガン州でも8月11日に、テキサス州出身の3人の中東系の若者が、大型スーパーで携帯電話80個を大量購入したため、テロリストの疑いで逮捕されている。スーパーには、警察から携帯電話を大量購入する者が現われた場合は、通報するよう要請が出ていた。
3人は、レンタルしているバンの中に1000個の携帯電話をのせていた。しかし、こちらの事件についてもFBIはテロ事件との関連を否定している。3人の弁護士は、彼らは携帯電話を売ってもうけようとしていただけだとし、「彼らはテロリストではなく、起業家だ」と主張している。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。