2006年08月28日15時12分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200608281512431

警察のスタンガン使用で死亡相次ぐ 人権団体は使用凍結求める

 警察に手向かう犯人らに、電気ショックを与えて抵抗する力を喪失させるスタンガンが、米国の警察現場で使用されている。しかし、近年、スタンガンの使用によって、死亡する例も目立っている。通常、衝撃と苦痛を与えるだけで殺傷能力はないとされるが、相手が薬物を使用中だったり、心臓に問題を抱えている場合は、死に至ることもあるといわれる。国際人権保護団体などは、警察が安易にスタンガンを使用している可能性もあるとして、使用基準を厳格にするよう求めている。(ベリタ通信=苅田保) 
 
 スタンガンは、相手に電気ショックを与え、攻撃能力をそぐもので、一般でも護身用として販売されている。米国の警察が広く使用しているのは、アリゾナ州にあるテイザー・インターナショナル社製造のスタンガン。このスタンガンは、ワイヤーのついたダート(吹き矢)を相手に撃ち込み、その後ワイヤーを通じて5万ボルトの電気ショックを与える仕組み。この衝撃で、一時的に相手を無力化し、撃退できるとされる。 
 
 米国では銃が氾濫しているため、警察が逃亡犯らと銃撃戦を演じることはしばしば起きる。スタンガンは、こうした銃使用によって警官や犯人が殺傷されるのを未然に防ぐ目的で導入された。 
 
 テイザー社製の最新モデルである「X26」などがポピュラーで警察に幅広く使用されている。このモデルは、以前の機種に比べ、攻撃能力は控え目になっているといわれるが、国際救援組織アムネスティ・インターナショナルなどによると、X26モデルなどが導入された後の2001年から04年にかけて、米国やカナダで70人以上が死亡しているという。 
 
 最近の死亡例としては、8月8日に米カリフォルニア州サンタアナで、交通検問にぶつかった青年が、逃走しようとしてスタンガンで死亡するケースが起きている。 
 
 米メディアによると、同日昼過ぎ、警察が灰色のバンの停車を命じた。すると運転手は突然、車から飛び出し、フェンスを飛び越え、逃げ出した。警官の一人が、男を追跡し、約1キロ走ったところで、追いついた。 
 
 警官は、男の動きを止めるため、スタンガンX26を発射した。警察の話によると、男は直ちに崩れ落ち、警官は男を取り押さえた。しかし、男の様子がおかしいため、近くの病院に搬送したが、既に死亡していた。バンの中から覚せい剤が検出されたという。男は27歳で、当時薬物を使用していたかはわかっていない。警察は遺体を解剖して死因を調べるという。 
 
 コロラド州でも8月4日に、警察がマリファナを栽培していた22歳の若者を逮捕しようとした際、抵抗したため、テイザー社のスタンガンを発射。若者は気を失い、痙攣を起こた末、死亡した。若者の家族は、体も大きくなく、おとなしい性格だったとし、スタンガンの使用は過剰防衛だと反論している。このほか、コネチカット州でも警察のスタンガンによる死亡が報告されている。 
 
 警察は、スタンガンは、実弾が発射される銃よりも、はるかに安全としているが、人権保護団体は、警察が、必要もないのに、スタンガンを使用している可能性があると問題視している。 
 
 またスタンガンが仕様基準よりも、強い電気ショックを与えていることも考えられるとし、スタンガンの使用凍結と、安全の見直しを当局に要請している。 
 
 テイザー社は安全性に問題はないとしているが、スタンガンの使用で死亡した者の家族らから、幾つかの訴訟を起こされている。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。