2006年08月30日04時28分掲載
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「善意の介護者」への財産贈与認められず 97歳の女性の遺産めぐり米州最高裁
介護を必要としていた97歳の女性が亡くなる3日前に、最期まで面倒を見てくれた知り合いのカップルに全財産を贈ることを決めた。しかし、女性の死後、遺族が反発し、カップルを訴えた。地裁、高裁で決着がつかず、最高裁までもつれ込んだが、カリフォルニア州最高裁はこのほど、カップルの訴えを退けた。その理由は、97歳の女性から財産を騙し取ろうとした可能性が少しでもあれば認められないというというもの。カップルの弁護士は、善意で介護をしてきた者を処罰する判決だと、失望の念を隠せないでいる。(ベリタ通信=苅田保)
米メディアによると、カーメル・ボスコさんが死亡したのは2001年9月。97歳だった。
亡くなる3カ月前から、介護をしていたのは、ボスコさんの知り合いのカップルだった。そのうちの一人のアン・エーマンさんは、ボスコさんの甥と一時結婚していた関係にあった。
ボスコさんには、財産を相続する自分の子どもはいなかった。一人で住んでいたボスコさんを、アンさんは、ボーイフレンドのジェームズ・ホーレイさんと共有している自宅に呼び、完全看護を行った。
法廷記録によると、料理を作り、お風呂に入れ、髪をとかしてあげたり、皮膚疾患の手当てなどもした。ホーレイさんは特に信頼を受け、郵便の開封や、銀行通帳の管理を任された。時には、ボスコさんのオムツを代えたりするのを手伝った。
▼死亡の3日前に遺書書き替え
ボスコさんは、アンさんたちに面倒をみてもらっている期間中に、数度遺書を書き換えている。亡くなる3日前には、44万8000ドル(約5100万円)の全財産を贈ることにした。
死後、アンさんと一時結婚していた甥たちが反発し、裁判に訴えた。1993年の州法では、高齢者を詐欺などから守るために、亡くなる直前の遺書の書き換えは、遺産を受け取る第三者の介護者が、詐欺行為ではないことを証明しない限り、認められない。
一審の判断は、アンさんは家族の一員と理解されるとし、第三者の介護者としての存在を認めず、カップル勝訴の判決を下した。二審は、これを退け、甥たちの勝訴の逆転判決をした。
州最高裁は8月21日の判決で、二審の判断を支持し、カップルの請求を退けた。多数意見は、カップルは第三者の介護者であると認定。その上で、「親しい友人関係」という主張だけでは、詐欺ではなかったとの証明にならないと判示した。
つまり、詐欺ではないことを証明するには、弁護士の立会いで正式な手続きを踏むことが必要になる。
これに対し、少数意見は、親切に介護した善意の人たちが、感謝のしるしを受け取れないことに不満を表明している。
ともかく最高裁の決定で、遺産は親類たちのもとへ行くことになった。カップルの弁護士は、ほとんど介護をしなかった親類たちのところに遺産が行き、手厚い介護をしたカップルが、処罰されるようになった結果に失望している。
ミズーリ大学の法科大学院のデイビッド・イングリッシュ教授は、介護者には元々詐欺を働く下地があると、初めから決め付けるようなカリフォルニア州法の考え方に疑問を呈している。
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