2006年09月01日10時50分掲載
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看護婦銃撃の88歳の男性に禁固32年 仮釈放の時は119歳
2年前のクリスマスイブに老人看護施設で、ナースステーションにいた看護婦を銃撃し、瀕死の重傷を負わせた88歳の男性にこのほど、禁固32年の刑が宣告された。仮釈放になるのは2036年で、この時は119歳に達している計算になるという。男性は、施設の運営に一方的に腹を立て、凶行に及んだとされる。しかし、裁判では終始、看護婦を撃ったのは、入所中の妻を不当な扱いから守るためだったと主張。刑が宣告された後も、この“信念”は崩れず、「自分のしたことを後悔していない」と、あくまで強気の姿勢を貫いた。(ベリタ通信=有馬洋行)
米メディアによると、この男性は、米カリフォルニア州サンシティのノーマン・ラーソン被告。10月には89回目の誕生日を迎える高齢者だ。
事件は2004年12月24日のクリスマスイブに起きた。ラーソンの妻ディーさんは、同州ぺリスにある老人看護施設に03年3月から入所していた。ディーさんは、アルツハイマー病や認知症で、施設が食事や身の回りの世話を行っていた。
しかし、ラーソンは、妻が入所した直後から、看護施設の運営に不満を持ち、看護婦が妻に強制的に食事を与えているとか、食事代が高いと苦情を申し立てた。
この不満は次第に施設にいる看護婦らに対する殺意にまで発展。妻を守るために過激な行動を取ることを決意させた。
ラーソンは24日に、車で看護施設に乗りつけ、駐車させた後、施設内に入った。そこでナースステーションにいたキャシー・スカーレットさんに銃弾一発を発射した。弾はキャシーさんの顔に命中した。弾は鼻の下から耳の裏側を貫通し、キャシーに後遺症の残る大怪我をさせた。
この後、妻のいる部屋に向かって歩いているラーソンを、施設職員が後ろからタックルして取り押さえ、警察に引き渡した。
関係者の証言では、ラーソンは、当時妻が肺炎になったことについて、施設が十分なケアをしていないためだと思い込んだ。また施設側が、妻が食事を与えられている状況を、ラーソンに見せることを拒否したため、不満を募らせた。
リバーサイド郡裁判所の陪審は5月に、殺人未遂でラーソンの有罪を認定。この後、ラーソンは弁護士を無能だとして解任し、量刑公判まで自分で弁護を行うことを決めた。
8月11日に量刑言い渡し公判が開かれた。量刑言い渡しの前、ラーソンは、自らの弁明を行い、看護婦は、妻を死なそうとしていたと、自らの行為の正当性を主張した。その上で、看護婦を殺害する意図はなく、あくまで妻を守ろうとしたものだと反論した。
また凶器の銃には、実弾5発が装填されていたが、使用したのは一発だけだと述べ、看護婦を殺害する意図があるなら、5発をすべて発射していただろうと語った。
これに対し、郡判事は、ラーソンは、妻を別の施設に移す金銭的余裕があったにもかかわらず、これをしなかったと指摘。被告の犯行は行き過ぎたものであり、同情を寄せるのには無理があると指摘し、32年の禁固刑を言い渡した。
妻は事件発生後も同じ看護施設に入居し、昨年9月に死亡している。
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