2006年09月02日17時19分掲載
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性的少数者に生きる権利を! イラン人ゲイの難民認定裁判を再考しよう 攝津 正
日本で難民認定を受けられなかったイラン人ゲイ難民申請者、シェイダさんが日本から北欧の第三国へ出国したのは2005年3月30日のことだった。それから一年半程の歳月が流れ、シェイダさんは出国先では難民と認められ、永住権も取得して幸福な日々を送っているという。だが最近、日本で彼の裁判闘争を支援した人々が中心となって、事件を風化させず、この閉鎖的な日本社会のありようを変えていくための討論の場を設けようという動きが出てきている。
シェイダさんは、日本初の同性愛を理由とする難民申請者である。というのも、かれの祖国はイランなのだ。イランには、同性愛を禁止する法律があり、違反者は、「石打ち刑」(犠牲者の半身を地中に埋め、先ず裁判官を筆頭に、多数の民衆が石を頭部めがけて投げ付け、長い時間を掛けてなぶり殺しにする残酷な刑罰)などで死刑になる。実際、同性愛の容疑で多数の性的少数者当事者が死刑になっている。
*イランの同性愛者弾圧の実態
http://www.sukotan.com/shayda/shayda_2.html
シェイダさんは、来日してから、性的・政治的な自由を求めるグループ(欧米に拠点をおく亡命イラン人同性愛者の人権を求める団体「ホーマン」)に参加してイランの現体制への批判を行っており、仮にイランに強制送還されたら、身に危害が及ぶ恐れは十分にあった。このため、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)はシェイダさんを難民(マンデート難民)と認め、シェイダさんは日本政府に難民認定を求める裁判を起こした。裁判闘争を支援する市民グループも生まれた。
しかし日本の司法権力は、シェイダさんを難民認定しなかったのである。
*シェイダさん在留権裁判1審 不当判決に終わる
http://www.sukotan.com/shayda/shayda_38.html
*シェイダさん在留権裁判 第2審も敗訴
http://www.sukotan.com/shayda/shayda_48.html
裁判所=司法権力の論理は、イランでも、同性愛を公言(カミングアウト)しなければ処刑の危険はない、というものだったが、これは不当である。先ず、自らの性的指向を公言できない状態(クローゼット)を死の恐怖をもって強制される生活を肯定していることがおかしい。
次に、シェイダさんは日本で、イランにおける人権状況の改善を求める同性愛者としてカミングアウトし活動してきたのだから、イランの諜報機関によってそのことが調査され、体制に不満を抱く同性愛者としてマークされていた可能性は十分にある。
だとすれば、裁判所=司法権力が言うのとは違って、シェイダさんには実際に身の危険があったと考えるべきなのである。ところが、日本の司法は、難民認定を求めるシェイダさんの訴えに門戸を閉ざした。
そもそも日本は、難民認定が非常に厳しい、難民に対して不寛容な国である。入管の収容者の取り扱いは、かれらの尊厳を踏み躙る劣悪なものである。これほどまでに排他的で、歓待の精神を欠いた日本国家。私達、日本国に居住する者らは、この日本国家の体質を変えるべく働き掛けていく必要がある。
それとともに、21世紀のこの地球上に、同性愛という他者を傷付けるわけでは全くない個人の生活様式を理由に人の命を奪う国家が存在していることにも、批判の目を向けていく必要がある。アメリカが全世界に輸出しようとしていると称する「自由と民主主義」を疑うことは勿論必要だが、と同時に、宗教的その他の理由による抑圧を許してはならない。偽りの普遍性を批判するとともに、特殊性の名における虐殺も非難すべきなのである。
その意味で、私達の闘いは二重である。グローバル化する国家と資本の論理に対抗すると共に、その反動としての宗教的原理主義の犯す殺戮にも否の声を上げるべきなのだ。
イランにおける同性愛者の人権侵害は国際社会で注目を集め、批判がなされている。
そこで日本でも、関係者らがシェイダさんの問題をあらためてグローバルな視点で再考しようと、集会などの取り組みを準備しはじめている。
(この記事は主に次の2つのサイトに依拠している)
チームS・シェイダさん救援グループ
http://www.sukotan.com/shayda/shayda_top.html
果てしない移民たちのためのホームページ
http://www.kt.rim.or.jp/%7Epinktri/afghan/index.html
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