2006年09月07日20時20分掲載
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黒人の子どもは後部席に 人種隔離の再現と保護者が反発
米南部のルイジアナ州で、スクールバスの女性の白人運転手が、バスに乗ってきたアフリカ系米国人(黒人)の子どもたちに対し、後部座席に座るように差別的な行動を取っていた。子どもたちからの苦情で、保護者が学校当局に善処を申し入れたが、当初学校側の反応は鈍かった。しかし、地元紙がこの事実を報道した結果、学校当局は、この運転手を休職処分にした。親たちは、約半世紀も前に、米国社会に広がっていた人種隔離の悪夢を思い出せるものとして憂慮している。(ベリタ通信=苅田保)
報道によると、新学期が始まった最近、黒人の子どもたち9人が、スクールバスに乗り込んだところ、白人女性のデロリス・デイビス運転手が、子どもたちに後部席に座るよう指示した。
子どもたちからこの事実を聞かされた二家族の親が、学校当局に苦情を申し立て、デイビス運転手がなぜこうした行動を取ったのか回答するよう迫った。
ある少女によると、運転手は、白人の子どもに座らせるために、席を空けるように命じたという。白人の子どもたちは、バスの中でどこに座るのかについて規制はなかったという。
地元紙が、こうした経緯を報道すると、インターネットのブログや、他のニュースサイトから大きな反響があった。新聞社には、カリフォルニア、サウスダコタ、フロリダ、ニューヨーク州などから電子メールが殺到した。
子どもの母親であるイバ・リッチモンドさんは「こうしたことが起きたのは恥ずかしいことだ」と批判する。デイビス運転手は、新聞社の問い合わせに一切応じていない。
▼学校がスタッフ指導へ
ある学校関係者は、今回の問題について、ショックを受けている。学校当局では、今後トレーニングの場を通じて、誤解を招くような行動を取らないようにスタッフを指導していく考えを表明している。
黒人の子どもたちがスクールバスで差別を受けているとのうわさは、地元では広がっていたという。ある保護者は、「黒人の子どもバスの後部に座らせるのは間違っている。そうした時代は過去のものだ」と批判している。
米国の黒人たちは、公共輸送機関の代表であるバスに関しては、特別な感情を持っている。1955年、アラバマ州モントゴメリーで、仕事帰りの会社員ロサ・パークスさん(故人)が、バスの白人の運転手から、白人に席を譲るよう命じられた。
当時、米南部は人種隔離の政策が取られており、白人と黒人は別々のトイレを使うなど、あからさまな黒人蔑視の感情であふれていた。バスも、白人が全部に座り、黒人は後部席と決まっていた。しかも、後部席でも、白人客が増えた場合は、黒人は席を譲って立つ義務があった。
パークスさんは、席を譲るのを拒否し、逮捕された。この事件が黒人によるバスボイコット運動につながり、その後の黒人の地位向上運動に多大な影響を与えた。1960年代半ばに、黒人の平等権を認める公民権法などが制定されている。
全米黒人地位向上協会(NAACP)でも今回のケースを重視、連邦政府の司法当局者に報告するとしている。
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