2006年09月08日06時18分掲載
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ブッシュ批判のTシャツ規制は検閲 当時の反戦中学生が勝訴
2年前、米東部バーモント州の中学生が、ブッシュ大統領を批判する図と文字の入ったTシャツを着て、登校した。シャツには、ブッシュ氏が若かりしころに溺れたとされる飲酒や、マリファナ吸引の過去などのメッセージも盛り込まれていた。またブッシュ氏を「弱虫タカ派司令官」などと呼んだ。学校側が、Tシャツを着用しないように命じたため、少年はその後、学校側が検閲をしたとして訴えた。一審は敗訴したが、二審で最近、逆転勝訴を勝ち取った。(ベリタ通信=苅田保)
米メディアによると、少年は当時13歳だったザカリー・ギレス君。現在は15歳になっている。ブッシュ大統領が対イラク戦争を開始した翌年の2004年初め、ギレス君は、中学校にブッシュ批判の文言が入ったTシャツを週に一度着て登校した。
具体的には、「世界支配ツアー」などと書き、ブッシュ大統領の外交政策を批判したほか、うそつき酒飲みといった表現もあった。このほか、ブッシュ氏の飲酒歴に言及する表現も使われていた。
ブッシュ氏は若いころは飲酒などにおぼれたが、40歳で生まれ変わったとしている。また04年の大統領再選キャンペーンの際に、ベトナム戦争時代に徴兵逃れのために州兵に応募したとも批判されたりした。
初め、二カ月間はお咎めなしだったが、学校の行事である遠足に出かける準備段階になって、Tシャツを脱ぐように命じられた。学校側は、保護者からの苦情がきたため、指導に乗り出すことにしたようだ。
これに対し、ギレス君はこの要求を拒否。このため04年5月、1日だけの停学処分を受けた。処分明けから、ギレス君は、学校側が問題視した個所に、指示に従ってテープを貼って登校した。しかし、抗議の意思を込めて“削除”された部分には「検閲」と書かれたテープを貼り付けた。
ギレス君のTシャツは、明確な政治的主張だったが、学校はこの論議に立ち入ることを避けた。それよりも学校側は、服務規程を根拠に、生徒は、麻薬や麻薬用具などに関する言葉がプリントされたTシャツを着用して登校することは禁止されていると、主張した。
▼学校を訴える
ギレス君は04年、人権団体の全米市民自由連合(ACLU)の支援を受けて、学校から検閲を受けたとして提訴に踏み切った。同年末、一審は、学校側は生徒に対して、問題個所をテープで隠させることができると判断した。このため05年に控訴していた。
ニューヨークの連邦高裁はこのほど、学校側の服装規定違反との主張を認めず、一審判決を取り消し、学校側は、Tシャツにテープを貼らせることで、生徒の表現の自由を侵したと指摘した。
ギレス君は勝訴の判決について、ブッシュ政権下でも表現の自由を認める判事がいたのは良いサインだと述べ、判決を歓迎した。
ACLUは、学校側が反ブッシュのTシャツに検閲を加えることによて、学校側の権利の範囲を逸脱したと主張。その上で、判決は、生徒の表現の自由を認めたもので、「生徒の勝利だ」と評価している。
一方、学校側の弁護士は、服装規定に反した行為であり、これが認められなかったことについて失望の念を表明した。弁護士は、今後、上訴するかどうかの協議を行う予定だという。
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