2006年09月12日08時12分掲載
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米大統領候補マケイン議員が狙われた? グルジアでミサイル攻撃
大統領選挙で出馬が予想されている共和党の実力者ジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)を乗せたヘリに向かって、地対空ミサイル一発が発射されたと報じられた。現場上空は、グルジアからの独立を主張している南オセチアの軍隊が防衛に当たっていた。仮にミサイルが命中し、マケイン議員が暗殺されるような事態になっていたら、大きな外交問題に発展するのは必至だった。情報はその後訂正され、別のヘリを狙ったものとしているが、依然真相はあいまいなままだ。(ベリタ通信=苅田保)
各種報道によると、ミサイルが発射されたのは8月28日。議員団は、ジョン・スヌヌ氏(ニューハンプシャー州選出)やリンゼー・グラム氏(サウスカロライナ州選出)ら含む共和党上院議員の計6人。マケイン議員が団長だった。ヘリにはサーカシビリ大統領も乗っていたとされる。
現場付近は、グルジアからの独立を宣言している南オセチア共和国が主張する領空内。同共和国側は、ヘリが上空を侵犯したため、地対空ミサイル一発を発射したとしている。南オセチアは親ロシア政権で、ロシアからの全面的な支援を受けている。
グルジア内務省によると、9月3日にもオクルアシビリ国防相の乗ったヘリが、南オセチア上空で再び銃撃を受け、ヘリが緊急着陸した。
ミサイルが、マケイン議員らのヘリに命中していれば、議員6人が全員死亡していたのは間違いないという。マケイン議員は、ベトナム戦争中、搭乗機が攻撃を受け、撃墜され、捕虜になった。長期間拘束された後、帰国を許されたが、米国では戦争の英雄として今でも人気を集めている。
08年の大統領選挙で共和党の有力候補者の一人で、グルジアで不測の事態が発生していれば、11月の連邦議会中間選挙を二カ月後に控え、米国の今後の政治地図が大きな修正を余儀なくされるほどだった。
▼背後にロシア?
ミサイルを発射したのは、南オセチア軍部隊とされるが、背後で影響力を発揮しているのはロシアとされる。ロシアと米国の関係は現在、当初の蜜月ムードから、イランの核開発疑惑に対処する姿勢をめぐって、食い違いが生じている。
不測の事態が起きれば、米国とロシアの関係が一気に緊張する可能性も否定できなかった。
グルジア内務省は、米上院議員団のヘリを狙ったミサイルが発射されたと公表したが、グルジアの米大使館はこれを否定。さらに米大使館は、グルジア内務省もミサイルは議員団ヘリを狙ったものではないと思っていると、打ち消しの発言をするなど、情報をめぐり混乱の輪が広がった。
当時何機かの政府ヘリが飛んでいたとみられるが、米大使館は、標的になったのは、別のヘリだと話している。
南オセチアは現在共和国を宣言しているが、国連は承認していない。元々、グルジア内の南オセチア自治州だったが、ロシアへの帰属心が強く、グルジアが1991年に旧ソ連から独立したため、グルジア内にとどまるのを拒否して独立を宣言した。このためグルジアと武力衝突が発生し、南オセチア紛争が勃発。和平合意などが結ばれたが、依然軍事的に不安定な状態が続いている
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