2006年09月12日19時55分掲載
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尾を引く警官による少女への一斉射撃 非殺傷手段は準備中だった
米カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のハンチントンビーチで8月に、ナイフを持った18歳の少女が警官に射殺された事件が、依然尾を引いている。少女が持っていたのは凶器は、ポケットナイフだったが、現場にいた警官2人は、少女に少なくとも十数発の銃弾を浴びせていた。遺族や友人たちは、スタンガンの使用など、もっとほかの手段があったのではないかと批判し、地元警察の前で抗議活動をしているという。警察は、内部調査が始まっていることを理由に、口を堅く閉ざしており、当事者の警官の氏名公表も避けている。(ベリタ通信=江田信一郎)
8月25日朝、ハンチントンビーチのアパートで、アシュリー・マクドナルドさん(18)が母親と口論になった。アシュリーさんは、ポケットナイフで母親の腕を切った後、外に飛び出した。
地元警察が現場に急行し、アパート近くの公園で、二人の警官が拳銃を構え、アシュリーさんにナイフを捨てるよう迫った。これを拒否したアシュリーさんは銃の一斉射撃を受け、倒れた。病院に搬送されたが、病院の話では、肩、胸、腹、腕などに多数の銃弾の跡があり、間もなく死亡した。
米メディアによると、アシュリーさんが持っていたのは、目撃者の話では、刃渡り10センチのポケットナイフだったという。警官が銃を発射した際、公園の駐車場では、他の警官が、非殺傷手段であるペッパーボール弾(カラシ様の粉で相手の行動を制圧する)を使用する準備をしていたという。
▼警察の対応に批判
事件の後、警察のやり方に対し、遺族や友人らが怒りの声を上げた。警察の発表では、アシュリーさんが、ナイフを警官に突き出したため、身の危険を感じ防衛のために発砲したことになっている。しかし、小型ナイフに対して、銃の一斉射撃を加える必要があったのかと批判が集まっている。
アシュリーさんが母親と口論した理由ははっきりしていないが、アシュリーさんは前日に、誰かとデートをした際に、薬を飲まされ、レイプされたという。警察は、レイプが本当だったかどうかを捜査中だが、事実とすれば、当日のアシュリーさんの行動に大きな影響を与えていた可能性は否定できない。
警察の独立調査官が、警官の発砲に問題がなかったかどうかを調べているが、二人の警官は既に公務に復帰している。
警官に銃使用を指導している関係者によると、警官が犯人と対峙する際、重要なことは一定の距離を保つことだという。当時、警官とアシュリーさんとの間は、2〜3メートルしかなかったといわれ、かなり危険な距離だった。
アシュリーさんがどのような形でナイフを突き出したのかは不明だが、こうした場合、相手の上体を狙って撃ち続けるのが、訓練で警官に教えていることだという。これに対しては、アシュリーさんは、むしろナイフを差し出すより、逃げる格好をしていたとの目撃証言もある。
病院によると、アシュリーさんは、体の正面の部分に15カ所の銃口の跡があり、背中には8カ所の跡が残っていた。弾が貫通したかどうかなどが明らかにされていないため、警官が何発発射したのかはわかっていない。
警察には、電子メールや電話で発砲に対し、市民から多数の抗議の声が寄せられているという。
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