2006年09月22日13時29分掲載  無料記事
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農と食

買うな!食べるな!アメリカ産牛肉 日消連、緊急アンケートと原料・原産地表示を求める署名運動

 2006年7月21日、厚生労働、農林水産両省は、アメリカ産牛肉の輸入を再々開すると決定しました。6月24日から7月23日まで行なった日本政府の現地調査でも、35施設のうち15施設で違反が見つかりましたが、すべての施設からの輸出を認めました。日本消費者連盟は一貫して拙速な輸入再開をするべきでないと政府に訴え、8月まで行なわれた政府との意見交換会でも多くの消費者が輸入反対を主張しました。政府は、こうした声を無視し、輸入再開決定しました。(2006年9月7日消費者リポート) 
 
現地調査は、日本向け輸出認証(EV)プログラムの遵守を形式的に確認しただけでした。それでもBSE対策のずさんさが明らかになりました。日本向け輸出認証を取っていない1施設が、すでに05年12月に日本へ牛肉を輸出しています。この施設についてはプログラムの遵守が確認されれば認証を与え、別の合併中の1施設については、合併後マュアルが整備されれば輸出できるとしました(8月15日には両施設とも輸出容認)。 
 
また別の1施設では、と畜過程で枝肉の仙骨に特定危険部位の脊髄が残存していましたが、ブロック肉にした際に除去したので輸出を認めました。他の施設ではマニュアルに対日輸出非適格品の唇肉が記載されていましたが、輸出認証を取り消すこともなく、極めて甘い形だけの調査だったのです。 
 
そもそもアメリカのBSE対策はきわめてずさんです。BSE検査も、これまでも全体の1%しかなかったものを、今後さらに縮小します。肉骨粉も家畜に与えられています。 
 
日本での検疫体制も形式的で、水際でのチェックは実際には実施できていません。私たち消費者は、日米両政府に抗議するとともに、小売りやレストラン、加工食品に対してアンケート調査を実施しました。これらの結果も参考にして、アメリカ産牛肉を拒否する意思表示をしましょう。 
 
また、日本消費者連盟は、知らない間にアメリカ産牛肉を食べさせられることのないよう、「牛肉等を使用した食品への原料原産地表示を求める署名」運動をすすめています。 
http://www1.jca.apc.org/nishoren/campaigns/campaings-contents/060904BSE_Syomei.html) 
(山浦康明) 
 
 
【輸入再々開で企業はアメリカ産牛肉を使うのか】 
(緊急アンケート結果報告) 
http://www1.jca.apc.org/foodsafety/2006/7-20-31.htm) 
 
アメリカ産牛肉の輸入再々開が決定し、厚生労働、農林水産両省によるアメリカ国内の対日輸出認定施設調査が行なわれていた2006年7月20日、日消連は食の安全・監視市民委員会と共同で、食品関連業者24社にアンケート調査を実施しました。輸入再々開決定直後で消費者の関心が高まっていたこともあってか、24社中21社から回答を得ました。(2006年9月7日消費者リポート) 
 
《輸入再々開後も約6割がアメリカ産牛肉拒否》 
消費者が最も関心をもっている「輸入が再開されたら米国産牛肉を使用しますか」との質問に対しては、21社のうち7社が「使わない」と答えたほか、「当面使う予定はない」という企業も7社ありました。 
 
「使わない」とした7社の中で、ヒガ・インダストリーズ(ドミノピザ)が牛肉自体を使用していないほか、日本マクドナルドはBSE(牛海綿状脳症)問題が発生する以前から牛肉はオーストラリア産(一部ニュージーランド産)に限定しており、アメリカ産は使っていないとのこと。そのため、より正確にいえば、積極的な意味で「使わない」のは5社で、今回調査した企業の約6割はアメリカ産牛肉の使用を拒否したことになります。 
 
《含み多い理由…本音はアメリカ産牛肉使いたい?》 
一方、アメリカ産牛肉を「使う」と答えた企業は1社ありました。BSE問題発生後もアメリカ産にこだわった吉野家です。また、「状況によっては使う」とした企業も5社に上りました。使う状況についてきいたところ、その答えはさまざまでしたが、「米国産牛肉の安全性の認知度が高まってから」(丸大食品)、「消費者の動向を良くみた上で判断する」(安楽亭)など、消費者の目を気にする答えもみられました。 
 
ただ、その一方で「輸入牛肉の内容(品質・価格・物量など)を良くみた上で判断する」(安楽亭)、「輸入量及び価格が安定した状況」(焼肉屋さかい)と、企業側の都合を優先させるような回答もありました。 
 
さらに、日本ハムのように「20か月齢以下、危険部位(SRM)が除去され、安全を確保する施設で処理されていることを大前提にする」とした上で、「消費者の求める米国牛への嗜好に応じて対応する」と、政府による対日輸出プログラムに全幅の信頼を置いているともいえる企業もありました。このほかには、「現地の安全性・安定性の確認がとれて社内コンセンサスにも問題がないとき」(フォーシーズ〈ピザーラ〉)という答えもありました。いずれにせよ、アメリカ産牛肉を「状況によっては使う」と答えた企業は、消極的ながらも輸入再々開を受け入れたといえるでしょう。 
 
《消費者の高い関心が企業の姿勢を左右する》 
すでに8月半ばからアメリカ産牛肉は市場に出回っています。しかし、今回の調査結果からも明らかとなったように、私たち消費者が企業の動向に目を光らせ、不安や不信を真剣に訴えれば、企業もそれを無視できないのです。本来であれば、食品を扱う企業として、安全性を何よりも優先させるべきなのですが、企業にその姿勢がみられなければ、消費者がそれを正していかなければなりません。 
 
機が熟したらアメリカ産牛肉を使おうと考えている企業もあります。生鮮肉以外に原産地表示が確立されていない現状では、知らない間にアメリカ産牛肉を口にしてしまうこともあり得ます。今後は、スーパーや焼肉店などで「この商品にアメリカ産牛肉は使われていますか」とぜひ聞いてみてください。このような消費者の声が企業のアメリカ産牛肉使用に歯止めをかけることになるはずです。 
(纐纈美千世) 
 
《アンケートの報告会開催》 
今回の調査結果を踏まえて報告会を開催します。安全性に対する不安を抱えたまま再々開したアメリカ産牛肉の輸入について、一緒に考えましょう。企業による説明と意見交換も予定しています。ぜひご参加ください。 
〇日時:9月30日15時30分〜17時 
〇会場:東京・恵比寿区民会館(JR恵比寿駅5分) 
〇資料代:500円 
〇共催:食の安全・監視市民委員会/NPO法人 日本消費者連盟 
〇連絡先日本消費者連盟 TEL:03-5155-4765 FAX:03-5155-4767 
 
《アメリカ産牛肉が危ない四つの理由》日本消費者連盟編・発行(500円) 
http://www1.jca.apc.org/nishoren/booklet/booklet-cont/booklet_cont1-america_beef.html 


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