2006年09月23日14時49分掲載  無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200609231449106

根津教諭の「君が代」拒否

判決を活かす行動を学校と教員が胸を張ってしていこう 日の丸・「君が代」違憲判決

  入学式などで日の丸への起立と「君が代」斉唱を教職員に強要する、東京都教育委員会の通達は「思想の自由を侵害する」違憲との判決を東京地裁は下した。今春の卒業式で君が代起立を拒否して停職3ヶ月の懲戒処分を受けた根津公子教諭(鶴川二中)は、この判決をどのように受け止めただろうか。根津さんから寄せられた文章を紹介する。(ベリタ通信) 
 
 予防訴訟完全勝利判決に思う 
 根津公子 
 
 傍聴をした友人から、勝利判決を電話で受けてにわかには信じられなかった。私が聞き間違えたのか、友人が判決を聞き間違えたのか、言い違えたのか? ようやくそれが間違いではないとわかり、お腹の底から「やったあー!」と叫びたい衝動に駆られながら職員室で同僚たちに勝利判決を伝えると、みんなともに喜んでくれた。握手を差し出してくれた人もいて、感動をともにした。ここ鶴川二中の職員室のように、この日、東京の職員室はどこも真っ当な憲法判断をした判決の喜びに浸っていただろう。 
 
 各区市町村教委は、都教委から独立した機関ということになっているから、都教委が出した10・23通達は、建前は小中学校には適用されないことになっている。現実には、都教委の「指導」どおりにしない区市町村教委など存在しないのに、だ。こうした機構・組織上のことから、私たち小中の教員は都教委を相手取ったこの予防訴訟の原告にはなれなかったが、この判決の喜びは、都立校の教員たちと同じ。家族との関係等で不起立、不伴奏という行動を選択できなかった教員たちもどんなにかうれしいだろう。悩む中で健康を害し、中途退職を選択せざるを得なかった教員たちも。不起立処分を受けた後、中途退職をした友人の一人が言った。「これまでは私たちが罪人にされていたけれど、今日からは都教委が罪人」。 
 
 私たちの主張の合法性・正当性が認められた。10・23通達を以って処分された私を含めた延べ345名の行為のそれが認められた。感無量。まず思ったことは、都教委は私を免職にすることはできなくなったということ。「憲法を破る」(都知事)「東京都は独自に教育基本法を改正した」(米長教育委員)と言ってはばからない人をトップとする都教委が、憲法判断を下した本判決に直情的な対応をし始めているが、それは焦りの表出だ。理が不起立・不服従教員にあることを裁判所が認めたのは、まさに345名の行動があったからだと確信する。「おかしい。従えない」という声・行動がなかったら、こうした判決はでなかったと思う。嫌がらせを受けながらも、正しいと思う行動をしてきてよかった!としみじみ思う。 
 
 東京都の学校のすべてと言っても過言ではないと思うのだけれど、教員たちのほとんどが、10・23通達が違法・不当だと思い、また校長たちのかなりも「おかしい」と漏らし、あるいは起立斉唱の教育的意義を説明できる校長に直接的にも間接的にも出会ったことがない。学校で働く職員のほとんどがおかしいと思っていることが、子どもと教育にとってさも大事なことのように宣伝され行われている無責任体制こそが異常なのだけれど、不服従をする、飛び跳ねた少数の教員の問題とされてきた。いわば「非国民」化することで、問題点がぼかされてきた。この問題が、原告と被処分者だけの問題ではなく、子どもや日本社会全体にかかわる問題であることが、判決をきっかけに認識されるといいなと思う。 
 
 判決が、「通達やこれに関する都教育委員会の指導は、教育の自主性を侵害する上、教職員に対し、一方的な理論や観念を生徒に教え込むことを強制するに等しい」と断じたことが、「多角度からの資料と考える機会を提供せず、一つの価値観を植えつけることは教育行為ではない」と主張してきた私にはことの他うれしい。今日からは、判決を活かす行動を学校が、教員たちが胸張ってしていくことができる。していかねばならない。 


Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
  • 日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
  • 印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。