2006年10月10日17時55分掲載  無料記事
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幼女めった刺しの兄妹を司法が断罪 ラスベガスで起きた凶悪事件

 カジノで知られるギャンブルの街ラスベガス。砂漠の中に人工的に作られた都会だが、目抜き通りには豪華ホテルやカジノが林立し、深夜まで人があふれている。週末には近隣の州から車で遊びに来る若者も多い。ギャンブルにつきものの麻薬なども地下ルートを通じて密かに売られている。3年前にラスベガスで起きた未成年の兄と妹による幼女刺殺事件も、麻薬販売に絡むいざこざから、何の罪もない幼女がめった突きにされて死亡するという痛ましいものだった。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 ギャンブルやセックス、麻薬に関する話は、ラスベガスには無数にある。殺人事件も時折起きる。大人の遊び場なので、ルールさえ守っていれば、凶悪事件に巻き込まれる危険性はぐんと減る。しかし、子どもの場合は事情が異なる。親が子どもを顧みずにギャンブルやアルコールにうつつを抜かせば、取り返しのつかない悲劇も起きる。 
 
 2003年1月、3歳の幼女が肉きり包丁で計20回もめった刺しされ殺害された事件が起きた。もう一人の10歳の少女も刺され、生命はとりとめたが、腰から下がマヒするという一生のハンデを負わされた。 
 
 なぜ子どもを巻き込むような凶悪事件が、ラスベガスで起きたのか。それは覚せい剤の売買によるトラブルが原因だった。 
 
 凶行に走ったのは、ユタ州出身の当時18歳の兄と16歳の妹。二人は、ラスベガス在住のカップルから、覚せい剤を入手した。購入価格は125ドルだった。しかし、覚せい剤と思った麻薬は、実は食卓塩だった。 
 
 逆上した二人は、麻薬を販売した夫婦が住むトレーラー(移動式)住宅に報復に向かった。妹のモニーク・マエスタスがドア越しに、留守番をしていた子ども二人に声をかけた。 
 
 「お母さんが、大変なけがをした」とモニークはうそをついて、10歳の少女にドアを開けさせた。その後、兄のボーと協力して3歳の幼女を刺殺、少女にも大けがをさせた後、ユタ州に逃亡した。しかし翌日逮捕された。 
 
 二人の母親は、日ごろからギャンブルに耽り、子どもの前で麻薬を打ったりしていた。小さな子どもを置き去りにして外出するのは米国では違法行為。この母親は事件後、裁判にかけられ、現在服役中だ。 
 
▼兄に死刑判決 
 
 一方、兄のボーは現在23歳、妹のモニークは20歳になった。二人は劣悪な環境で育っており、モニークは子どものころ、レイプされた過去を持っている。 
 
 二人は裁判で犯行を認めたが、兄の場合は情状酌量の余地なしとして、死刑判決が出ている。モニークは今月5日、判決公判で、申し訳ないことをしたと謝罪したが、裁判所は47年以上の禁固刑を宣告した。犯行時16歳だったため死刑を免除されたに過ぎない。 
 
 しかもモニークの仮釈放が認められるのは50年近く先の話で、65歳以上になった時だ。ボーは死刑判決のため、自動的に控訴の形になっているが、今後は死刑囚房に収監され、確定後は静脈注射による処刑が待っている。 
 
 奇跡的に助かった少女は現在高校1年生になっている。刑務所にいる母親とは電話で話したりしているが、刑務所は訪れたくないという。現在里親の下で育てられている。里親の養子になることを希望している。 
 
 復讐の思いはなく、犯人も含め、誰も死ぬことを望んでいないという。そうしたことよりも、早くマスコミに追われない身になりたいと話している。 


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