2006年10月15日10時09分掲載
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5億円遺贈に自然保護団体はびっくり 89歳で死去した元教師
カナダの自然保護団体にある日、電話があった。寄付をしたいとの申し出だった。電話をしてきたのは、2005年に死亡した女性の遺言執行人。女性は生前、この保護団体に遺産を寄付することを決めていた。寄付自体はそう珍しいことではないが、保護団体の関係者は、その額を聞いてびっくりした。430万ドル(約4億9450万円)という高額なものだった。個人として同団体に寄付された額としては、これまでの最高は100万ドル。その4倍以上だった。(ベリタ通信=江田信一郎)
カナダからの報道では、この女性はトロント在住で、05年8月に89歳で死去したロベルタ・ラングトリーさん。カナダの公立の小学校で教師として55年間働いた経歴を持つ。
自然保護活動を続ける非営利団体「カナダ自然保存機構」(本部トロント)が最近、ラングトリーさんからの寄付を発表した。病院や学校に多額の寄付が贈られるのはしばしば報じられているが、自然保護団体に、大きな寄付が行われることは極めてまれだ。
それだけに「カナダ自然保存機構」は、今回の寄付を高く評価している。目下、湿原の購入や、トロントに近い「オーク・リッジ・モレーン」(氷河の動きで形成された氷堆石の地域)の保存対策などに使うことを計画している。
同機構は1962年に設立され、カナダの自然を保存するために、自然林の買い取りなどを行い、自然の生態系の保護に努めている。
ラングトリーさんと同機構のつながりは1988年から始まっている。以後、毎年5000ドルから1万ドルの寄付を毎年続けていたという。長年教師として働き、自閉症の子どもの会話訓練も担当していた。
大金はラングトリーさんが長年の株式投資などでもうけたものだった。1973年に株ブローカーに対し、50万ドルの資金運用を依頼した。購入した株は、IBM。その後、IBMは情報革命の波に乗り成長、大きな儲けを得た。遺産の執行を依頼されたのも、そのときの株ブローカーだった。
同機構は最初に寄付の申し出があった際、その額を聞いて間違いだと思ったと話している。グリーンピースなど他の自然保護団体にも、個人からこれだけの寄付が行われたことはないという。
ラングトリーさんは、かなり才覚のある人だったようだが、教師時代は、控え目で、羽振りのよさを鼻にかけるようなところは、まったくなかったという。生活は質素だった。車も古いものを乗り回していた。
ただ困窮している知人や自然保護活動へ寄付にはきわめて熱心だった。近所の人の話では、困窮者の寄付を依頼した際、ラングトリーさんは、一般の人が10ドルくらい寄付するところを、300ドルも払ったという。
また生活に困っている知人たちに何度も匿名でお金を贈ったりした。手紙を開けたら、中に2万5000ドルから3万ドルの小切手が入っており、多くの人が驚いたという。
独身で、子どももおらず、トロントで普通の一階建ての家に住んでいた。遺産を継承する子どもいなかったため、遺産を「カナダ自然保存機構」に寄付することを決めたようだ。
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