2006年10月15日10時10分掲載  無料記事
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15歳少年が散弾銃持ち乱入 必死で阻止した校長は死亡

 米国で学校を舞台にした銃撃事件が相次いでいる。米ウィスコンシン州では9月末、喫煙をとがめられた高校1年の男子生徒が、学校に銃を持って乱入し、校長を射殺する事件が起きた。少年は、学校での喫煙を校長に注意されたことを根に持っていたらしい。この事件の2日前には米コロラド州の高校で、銃を使った人質殺害事件が起きており、銃社会米国の病める一面を浮き彫りにしている。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 米メディアによると、9月29日午前8時ごろ、ウィスコンシン州にある高校に、同高校1年のエリック・ハインストック(15)が散弾銃を手にして現れた。エリックはまず社会科の教師に銃口を突きつけた。これを見つけた校務員が少年に飛びかかった。 
 
 倒れた拍子にエリックの手から散弾銃が離れた。一見、エリックの行動を抑制できたかと思われた。しかし、エリックは今度は、隠し持っていた別の銃を取り出そうとした。 
 
 身の危険を感じた教師らは、現場から逃げ出した。そこへ現れたのが校長のジョン・クラングさん(49)。エリックの行動を制止しようと、エリックに向かった走り出した。 
 
 このためエリックは銃を3発発射。校長は背中や手に被弾しながらも、少年ともみ合いになった。そこへ身を隠していた教師や校務員らも応援に駆けつけ、ようやく少年を取り押さえた。 
 
 目撃者の話では、校長は学校玄関のホール付近で撃たれたという。足の付近からおびただしい血が流れていたという。頭に撃たれ傷が致命傷とみられ、その後死亡している。 
 
 警察当局は、エリックを逮捕した。未成年者だが事件の凶悪性を考えて、成人扱いとして第1級殺人罪でこのほど起訴した。有罪になれば最高で終身刑になるという。ウィスコンシン州は死刑が廃止されている。 
 
 教職員や生徒らは、校長が自らの命を考えずにエリックに果敢に向かったことを賞賛、校長は英雄だと話している。校長の妻も、彼ならああした行動を取るのは不思議ではないとしている。 
 
 エリックは自宅にある銃の保管場所から無断で銃を取り出していた。郡保安官事務所では、子どもが家庭から銃を勝手に持ち出す恐れがあるため、近年、引き金に鍵をかける「ガン・ロック」と一般的に呼ばれる装置を無料で渡している。 
 
 今回の事件を踏まえ、「ガン・ロック」が欲しい家庭は、当局に申し立てるよう呼びかけている。 
 
 エリックは逮捕後、警察に対し、学校でいじめを受けたこと、これを学校側に通告したが、取り合ってくれなかったと話している。しかし、エリックがむしろいじめをしていたとの証言もあり、事実関係がはっきりしていない。 
 
 一方、エリックの家庭環境はあまり恵まれたものではなかった。両親は離婚している。父親は5年前にエリックを蹴ったりしたため、警察に逮捕されたことがあるという。 
 
 米国の学校では最近、銃による犯罪が増えている。9月27日にはコロラド州で生徒になりすました格好で侵入した53歳の男が、女子高生2人を人質に取り、一人を射殺する事件が起きている。似たような事件がカナダでも最近起きている。 


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