2006年10月15日10時13分掲載  無料記事
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アーミッシュの学校襲撃はコロラドの事件に酷似 まねたとの見方も

 米ペンシルベニア州ランカスター郡にあるキリスト教の一分派であるアーミッシュの運営する学校で今月2日、再び銃による悲劇が繰り返された。32歳の男が銃を持って教室に押し入り、女子だけを人質にし、警官隊に追い詰められるや否や、人質を至近距離から撃ち、その後自ら銃で自殺した。人質のうち7歳から13歳までの女子5人が死亡、5人が重傷を負った。犯罪の手口は、その6日前に米コロラド州のプラット・キャニオン高校で起きた人質殺害事件と酷似しており、コロラドの事件が、何らかの形で刺激材料になったのではとの見方も広がっている。(ベリタ通信=江口惇) 
 
 犯人はチャールス・ロバーツ(32)で、アーミッシュの農場からミルクを集めるトッラクの運転手をしていた。妻と子ども3人がいるが、犯罪歴もなく、動機がよくわかっていない。アーミッシュは電気や電話、車を使用せず、質素な生活ぶりで知られている。 
 
 ロバーツは教室にいた男子や教師、それにその家族らを追い出し、女子10人だけを人質にし、ドアにバリケードを築いた。間もなく警官隊が駆けつけると、直ちに発砲を始め、少女たちを背後から撃ち、自殺した。 
 
 ロバーツは犯行の数週間前から、襲撃に使用する武器などを用意していた。特に目を引いたのは、少女たちを拘束して性的ないたずらを加えるのが目的とみられるプラスチック製の手錠やオイルなどの小道具を用意し、持ち込んでいたことだった。 
 
 しかし、米メディアによると、教師らが直ちに警察に通報したため、いたずら行為はできなかったとされる。 
 
 一連の事件の経緯は、9月27日にコロラドのプラット・キャニオン高校で起きた人質殺害事件と極めて似通っている。 
 
 コロラドの場合は、53歳の男性が銃を持って教室内に侵入、男子生徒を追い出し、女子生徒だけを人質に取った。SWAT(特殊攻撃隊)が突入すると、最後まで人質にしていた2人のうち、一人を撃った後、自殺している。撃たれた16歳の女子生徒はその後死亡した。 
 
 ある精神科医が米メディアに語ったところでは、アーミッシュの事件は、コロラドの事件をまねた可能性があるという。同じような事件を起こすことを考えていた人間が、先を越されたと思い、自らも凶行に走ったという見方である。 
 
 このほか、コロラドの事件では、男が、人質を監禁中に女子生徒にわいせつな行為を加えたことが明らかになっている。アーミッシュの事件でもロバーツが人質に性的な行為を行うことを計画していた。さらに共通しているのは、両方の事件とも動機がはっきりしていない点だ。 
 
 ロバーツは銃撃を始める直前に、持ってきた携帯電話で妻に電話し、20年前に親類の子ども2人に性的な行為を加え、それに苦しんでいたことを告白している。 
 
 また自殺後、妻に宛てた遺書が見つかり、この中で、1997年に二人の間に初めて生まれた子どもが早産で、わずか20分後に死亡したことを悔やみ、自分や神を憎んでいること書き綴っていた。しかし、これらの事実がなぜ学校襲撃につながったのかは不明だ。遺書は、コロラドの事件でも見つかっている。 
 
 前述の精神科医によると、自殺は、自分に対する怒りの表現だが、この内なる怒りは、外部への怒りとして暴力的に現れることがあると指摘している。 


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