2006年10月15日10時16分掲載
無料記事
http://www.nikkanberita.com/print.cgi?id=200610151016280
窃盗犯に5200万円を支払う羽目に ロス市警が暴力行使で
警察のパトカーが逃げる犯人の車を追跡する模様は、しばしば地元テレビが「速報」の形で生中継する。カー・チェイスは筋書きのないドラマだけに、視聴者からの関心も高い。しかし、その半面、テレビで完全中継するので、警官も捕まえるときに、過度の暴力を振るったりすると、ビデオにばっちり撮られてしまう。それが現実となったのが、2004年に米カリフォルニア州ロサンゼルスで起きたケースだ。(ベリタ通信=江口惇)
ロス市警(LAPD)のパトカーが04年6月23日、盗難車を運転していたスタンリー・ミラーさん(39)の追跡を始めた。ミラーさんは34キロ逃げ回った後、車を止め、外に出た。
そこへ警官が順次駆けつけた。まず一人目の警官が、ミラーさんにタックするし、二人は地面に倒れこんだ。この模様は上空を旋回するテレビ局のカメラが生中継していた。
さらに二人目の警官が現場に到着。その直後に3人目の警官ジョン・ハットフィールド氏が到着した。ミラーさんは既に地面に倒れ伏し、抵抗する素振りはみせていなかった。しかし、ハットフィールド氏は、ミラーさんを組み伏せると、右手に持った金属製の棍棒を振り上げ、殴打を続けた。
同氏は11回にわたってミラーさんへの殴打を繰り返した。ミラーさんのところに駆けつけた警官は、ハットフィールド氏を含め7人だったが、周囲にいた警官たちは、棍棒を打ち下ろすハットフィールド氏の行動を誰も制止しようとはしなかった。
この様子は、上空のテレビ局のカメラが逐一中継した。ミラーさんはアフリカ系米国人(黒人)で、ハットフィールド氏はヒスパニック(中南米系)だった。
一連の様子は、1991年にロス暴動のきっかけになった白人警官らによる、黒人のロドニー・キングさんへの殴打事件に酷似していた。黒人活動家らも、ハットフィールド氏を訴追すべきだと指摘した。
このためハットフィールド氏は、間もなくLAPD内部の懲戒委員会の審査対象になった。ウィリアム・ブラットン市警本部長は、犯人が武装しており、棍棒によるけがもたいしたことがなったとして、過剰な暴力の行使はなかったと弁護した。
しかし、懲戒委員会が解雇相当との結論を出したため、05年8月にハットフィールド氏を解雇した。同氏への刑事訴追は行われなかった。
一方、窃盗容疑で訴追されたミラーさんは04年12月に禁固3年の刑を宣告され、州刑務所に入ったが、ことし2月に釈放になった。
この間、ミラーさんは棍棒での殴打で頭に損傷などを受けたとして市を相手取り、2500万ドル(約28億7000万円)損害賠償請求の訴えを起こしていたが、今月6日、市がミラーさんに45万ドル(約5200万円)の損害賠償をを支払うことで大筋合意した。
ミラーさんの弁護士ブラウン・グリーンさんは、警官の言語道断の行為にもかかわらず、傷の程度があまり深刻でなかったのは幸運だったと話している。
警官の職を棒に振ったハットフィールドさんは最近、ブラットン市警本部長を相手取り、解雇は不当として裁判を起こした。
Copyright (C) Berita unless otherwise noted.
日刊ベリタに掲載された記事を転載される場合は、有料・無料を問わず、編集部にご連絡ください。ただし、見出しとリード文につきましてはその限りでありません。
印刷媒体向けの記事配信も行っておりますので、記事を利用したい場合は事務局までご連絡下さい。