2006年10月24日00時45分掲載  無料記事
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警察の見込み捜査の代償は8300万円 ロスの連続売春婦殺害で

 14年前に米カリフォルニア州ロサンゼルスで売春婦が相次いで殺害される事件が発生した。ロサンゼルス市警(LAPD)は有力容疑者として現場近くの小学校でパートの校務員として働いていた知的障害者の男性を逮捕した。男性は有罪となり36年以上の禁固刑に処せられた。しかし、事件発生から12年後に、DNA鑑定の結果から事件と無関係であることがわかり釈放された。出所後、男性は市当局を相手取って損害賠償請求の訴えを起こしていたが、このほど、市が72万ドル(約8300万円)を払うことで合意が成立した。(ベリタ通信=江田信一郎) 
 
 米メディアによると、この男性はデイビッド・ジョーンズさん。知的障害者で8歳程度の理解能力だったジョーンズさんに対し、当時の取り調べ警官が自供を誘導して、犯人に仕立てあげていったケースだ。物証や目撃者もない事件だったが、自白だけで有罪となり、刑務所に送られていた。 
 
 1992年に売春婦の女性4人が殺害される事件が相次いで発生した。まず9月に学校で女性の絞殺死体が見つかった。11月にも、学校内で32歳の女性の半裸死体が見つかった。死因は絞殺だった。さらに12月に絞殺された42歳の女性が発見された。4人目の犠牲者も学校近くで半裸の絞殺死体で見つかった。 
 
 警察は、以前に売春婦とレイプしたことのある校務員のジョーンズさんから事情を聴取した。警察はジョーンズさんに現場の写真を見せ、4カ所の現場にも連れて行き、ジョンーズさんを洗脳した。 
 
 その結果、ジョンーズさんが売春婦と性行為をした後、金銭の支払いや麻薬の件で口論となり、首を絞めたとの供述調書が作られた。しかし、ジョーンズさんは殺害は否定した。 
 
 警察は、被害者の女性の体に残されていた遺留物から、犯人の血液型は「A」と認定していた。しかし、ジョンーズさんの血液型は「O」だった。裁判では、陪審員は、なぜかこの事実を考慮せず、有罪の評決を下した。4番目の犠牲者は、殴打による死亡で、警察の主張するような絞殺ではなかったため、この事件だけは無罪となった。 
 
 95年に36年以上の禁固刑が宣告された。その後、控訴も棄却され、州刑務所に服役した。獄中でも無罪であると主張し、米連邦捜査局(FBI)に、「犯人ではない。DNA鑑定が行われていれば、自分が犯人ではないことがわかるだろう」とする手紙を送った。 
 
 手紙は獄中の仲間がまとめ、ジョーンズさんが署名していた。この署名でも、ジョーンズさんは自分の名前のスペルを間違えていた。 
 
 その後、LAPDが1990年から2000年に起きた連続殺人事件の見直しを行っている過程で、他のレイプ事件で服役中のチェスター・ターナーが「A型」の血液で真犯人であることが明らかになった。この結果、ジョーンズさんは04年3月に釈放された。逮捕時からを含め、12年ぶりに自由の身になった。 
 
 ターナーはロサンゼルス周辺で起きた未解決の数十件の殺人事件に関与している可能性が高いという。 


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